平穏な生活を望む美貌の子爵令嬢は、王太子様に嫌われたくて必死です
そしてその日々が自業自得により突然終わり、フェリクス様のいない日々が始まって早数週間。

そんな頃に久しぶりに学園へ登校することになった。

卒業を間近に控えた3年のこの時期になると、もう授業もなく学園に行くことはほとんどない。

寮の部屋も引き払い、今は邸宅で生活をしている。

今回学園に赴くのは、来たるべき卒業パーティーについての事前説明会があるからだった。

当日の流れや注意事項などの説明があるのだ。

3年生全員に一度に説明を行うらしく、今日は各教室ではなく、大人数が収容できる大教室への集合となっている。

「シェイラ、なんだか久しぶりね」

大教室に入るなり声を掛けてきてくれたのはマルグリット様だった。

今日も今日とて優雅で美しく、まるでその場に大輪の華が咲き誇るような存在感だ。

自由席だったこともあり、私はマルグリット様と談笑しながら隣の席に腰掛けた。

大教室内は多くの生徒でザワザワと騒ついている。

久しぶりに会う者同士、会話に花を咲かせているようだ。

この時期の話題といえば、もっぱら卒業パーティーに関することである。

「エスコートの相手は決まった?」

「ドレスは何色にするの?」

そんな会話が次々耳に飛び込んでくる。

特に一緒に出席するパートナーが誰かという点は最注目事項であり、皆が口々に探りを入れているのが感じられた。

もちろん推測の域をでないような噂話も飛び交う。

「ねぇ、カトリーヌ様のパートナーを王太子殿下がされるって噂は本当?」

「それ私も聞いたわ! でもカトリーヌ様ってギルバート様という婚約者がいらっしゃるわよね?」

「でもカトリーヌ様ったら王太子殿下に会うためにお父上に帯同してほぼ毎日登城されているらしいわよ。もちろん殿下もお忙しい方だから会えない日も多いみたいだけど、たまにお二人が親しげに話しているのを目にするって王城勤めの私の兄が言っていたわ」

「まあ! そうなの!? 王太子殿下はてっきりマルグリット様のパートナーを務められると思っていたけれど、その話が事実なら分からないわね」

「でもただの噂でしょう? 王太子殿下の噂といえば、シェイラ様とのデートの話もあったじゃない。だからわたくしは結局のところやっぱりマルグリット様が最有力だと思うわ」
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