平穏な生活を望む美貌の子爵令嬢は、王太子様に嫌われたくて必死です
僕には理解できなかったシェイラの心情を淡々とマルグリットは紐解いていく。

最後に誤解ではないかと言われた時には隠しきれない歓喜が訪れた。

 ……じゃあ僕が今まで通りシェイラに近づいても苦しめることはない? シェイラを諦めなくていいってこと?

先程まで悩んでいたことに解決の糸口が示され、途端に目の前が明るく開けた気がする。

それをもたらしたのがマルグリットという点が癪ではあるが、感謝せざるを得ない。

「あら、少しは見れる顔になったではありませんこと。その調子でわたくしのお友達であるシェイラを悲しませないようにお願いしますわね」

「ああ、分かったよ。助言に感謝する」

「少々わたくしも興奮しておりましたようで、勢い余ってシェイラの気持ちを暴露してしまいましたわ。……なのでその点はわたくしが話したことは秘密ですわよ? 推測の部分もありますからご自分できちんとシェイラから気持ちを聞いてくださいな」

どうやらマルグリットは多少喋りすぎたと反省しているらしい。

今回は喝を入れてもらったことに感謝して秘密は守ることにしよう。

シェイラ本人の口から気持ちが聞きたいのは僕も同じなのだから。

「リオネル、悪いんだけど僕は出てくる。戻ってから残りの執務は必ずやるから残しておいて。あとマルグリットのことよろしくね」

今すぐシェイラに会いたい気持ちに駆られた僕は席を立ち上がる。

マルグリットへは謝礼も兼ねてリオネルとの時間を贈ることにした。

「お待ちください、フェリクス様。今しがた諜報部から連絡が入りました。……“動きあり”とのことです」

だが、浮かれ気味だった気持ちがリオネルから告げられたこの一言で一気に引き締まる。

僕は諜報部からの連絡内容を確認すると、シェイラのもとへ急ぐべく執務室を飛び出した。
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