平穏な生活を望む美貌の子爵令嬢は、王太子様に嫌われたくて必死です
手紙の持ち主である本人から勧められ、私はゆっくりと便箋に目を落とした。
見慣れた母の筆跡が並んでいる。
懐かしい気持ちになりながら一つずつ文字を目で追い始めた。
――――――――――――――――
アイザックへ
元気にしている? あなたのことだからきっと周りに心配されるくらい仕事に励んでいるのでしょうね。あなたがいればきっとマクシム商会はエーデワルド王国一の商会になるわ。私にはその姿が思い描けるもの。頑張るのはいいけど、くれぐれも身体には気をつけて。
今日手紙を書いたのはね、どうしてもあなたに報告したいことがあったからなの。私、子供を産んだのよ。女の子なんだけど、ものすごく可愛いの。将来美人になること間違いなしだわ。
あなたとの結婚が叶わず、失意のもとアイゼヘルム子爵家に嫁いだわけだけど、正直言ってこれまで辛い日々だったわ。平民と貴族では常識が違うことが多くてお義母様からは毎日叱られてばかり。社交界でも元平民ということで馬鹿にされることだってあるの。何度も何度も枕を涙で濡らしたわ。
でもね、娘が産まれて一変したの。娘のためならどんな苦労も乗り越えられる、そんな気力が湧いてくるのよ。驚きだわ。
私はね、自分の経験から身分の違う結婚は不幸なだけだと思っているの。身の丈にあった結婚がやっぱり一番よ。娘にもそう言って聞かせるつもり。愛する娘には私のような苦労を背負って欲しくないから。
ただ、愛する人の存在があればきっとどんな苦労も乗り越えられるとも感じているの。他ならぬ娘がそう私に教えてくれたわ。私はあなたと結婚できなかったけれど、今は娘がいるから強くいられるのよ。
ごめんなさい、長々と綴ってしまったわね。何が言いたかったかというと、娘が産まれた今、私はとっても幸せよってことが伝えたかったの。たぶんあなたは私のことを心配してくれていると思ったから。いつかもっともっと長い年月が経ってお互いお爺さんお婆さんになった頃にでも二人で人生を振り返りたいわね。その時までお互い頑張りましょうね。
オリミナ
――――――――――――――――
「………っ」
最後まで手紙を読み終わり、私は胸が震え言葉を詰まらせた。
文面の至る所から母が私に向ける愛が伝わってきて熱いものが込み上げてくる。
見慣れた母の筆跡が並んでいる。
懐かしい気持ちになりながら一つずつ文字を目で追い始めた。
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アイザックへ
元気にしている? あなたのことだからきっと周りに心配されるくらい仕事に励んでいるのでしょうね。あなたがいればきっとマクシム商会はエーデワルド王国一の商会になるわ。私にはその姿が思い描けるもの。頑張るのはいいけど、くれぐれも身体には気をつけて。
今日手紙を書いたのはね、どうしてもあなたに報告したいことがあったからなの。私、子供を産んだのよ。女の子なんだけど、ものすごく可愛いの。将来美人になること間違いなしだわ。
あなたとの結婚が叶わず、失意のもとアイゼヘルム子爵家に嫁いだわけだけど、正直言ってこれまで辛い日々だったわ。平民と貴族では常識が違うことが多くてお義母様からは毎日叱られてばかり。社交界でも元平民ということで馬鹿にされることだってあるの。何度も何度も枕を涙で濡らしたわ。
でもね、娘が産まれて一変したの。娘のためならどんな苦労も乗り越えられる、そんな気力が湧いてくるのよ。驚きだわ。
私はね、自分の経験から身分の違う結婚は不幸なだけだと思っているの。身の丈にあった結婚がやっぱり一番よ。娘にもそう言って聞かせるつもり。愛する娘には私のような苦労を背負って欲しくないから。
ただ、愛する人の存在があればきっとどんな苦労も乗り越えられるとも感じているの。他ならぬ娘がそう私に教えてくれたわ。私はあなたと結婚できなかったけれど、今は娘がいるから強くいられるのよ。
ごめんなさい、長々と綴ってしまったわね。何が言いたかったかというと、娘が産まれた今、私はとっても幸せよってことが伝えたかったの。たぶんあなたは私のことを心配してくれていると思ったから。いつかもっともっと長い年月が経ってお互いお爺さんお婆さんになった頃にでも二人で人生を振り返りたいわね。その時までお互い頑張りましょうね。
オリミナ
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「………っ」
最後まで手紙を読み終わり、私は胸が震え言葉を詰まらせた。
文面の至る所から母が私に向ける愛が伝わってきて熱いものが込み上げてくる。