平穏な生活を望む美貌の子爵令嬢は、王太子様に嫌われたくて必死です
下衆な笑いを浮かべて、舌舐めずりするように私を見下ろす男達の不穏な言葉に、頭の中では最大限の警報が鳴り出す。

なんとなく彼らの目的を察してしまった私は、距離を取るように座ったままジリジリと後退した。

「どうです? 相手に間違いありません?」

「……間違いありません」

ボスらしき男は、私の前に依頼主の代理人である女を連れてくると顔を確認させた。

女と目が合い、先程よりもさらに動揺し出した女はパッと私から視線を逸らして、震える声で答えた。

その後はもう関わりたくないと言わんばかりに、私や男達から距離を取り、店舗の隅の方で身を縮めている。

どうやらこの女本人は今回の依頼に賛同しているわけではないようだ。

 ……それなら助けてくれないかしら。なんとか説得できれば……!

そんなわずかな希望に縋るため考えを巡らせようとしたが、事態は待ってくれない。

依頼主代理からの最終確認を得た男達が私との距離を詰めてくる。

そして一人の男が私の顎を掴み、クイッと上に持ち上げた。

「ウッヒョー! 超絶美人っスよ! こんないい女、見たことないっス! しかも肌スベスベ! 全身こんなスベスベなんスかね?」

「おい、お前ばっかりズルいぞ。オレに先にヤラせろ!」

「こら、お前達ケンカするな。今回の依頼は純潔を奪うことだが、それさえちゃんとやれば後は俺達の好きにしていいって言われてる。つまり何回ヤろうが自由ってことさ。まずはボスである俺が依頼を片付けるから、お前達は後でゆっくり味わえ。なんせ時間はたっぷりあるんだからな」

「ヘイヘイ。一番はボスに譲るっスよ」

「しょうがねーな。ボスの次はオレが最低3回はヤラせてもらうからな」

耳を塞ぎたくなるような会話が男達三人によって目の前で繰り広げられているのに、逃げることもできずただ聞いているしかないなんて私はとても無力だ。

これから訪れる自分の末路を想像して絶望感が押し寄せる。

なんとか手首の縄を解こうとするが全然弛まないのがもどかしい。

「それじゃお嬢さん、悪く思わないでくれよ? これも依頼なんでな。せめてもの情けに痛くないよう優しくしてやるよ」
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