平穏な生活を望む美貌の子爵令嬢は、王太子様に嫌われたくて必死です
24. 勇気と覚悟
「なっ、誰だ!!」
「誰っスか! ヤバイ雰囲気っスよ!」
「おい、お前らあの男を捕えろ!」
突然の予期せぬ乱入者の登場に取り乱したのは男達だった。
そんな男達には目もくれず中に入って来たフェリクス様は、私の姿に目を留めると、凄まじい怒りを眉の辺りに這わせて全身に殺気を漂わせた。
「この建物は包囲している。お前達に逃げ場はない。もう一人の女もすでに捕縛済みだ」
そう言い放ったフェリクス様の声は耳にするだけで相手を身震いさせてしまうような声色だ。
にも関わらず、男達は逃亡を目論んで三人で一気にフェリクス様に飛び掛かり出した。
一対三、勝ち目あり、と思ったのだろう。
男達はニヤリと顔を歪ませる。
だが、フェリクス様はまるで虫でも追い払うかのように軽い手捌きで男達を一瞬で制圧してしまった。
一方的にのされた男達はフェリクス様のあまりの強さに驚愕し、恐怖を顔に張り付けている。
フェリクス様は無力化した男達をロープで縛り外へ連れて行くと、再び戻ってきて今度は隅の方でガタガタ震えている女の方へ目を向けた。
「お前が何者かも把握済みだ。同情すべき点は多少あるが、加担した以上罪は罪だ。大人しく外に出ていろ」
女の方は抵抗することはなく、絶望感で顔を固くしながらもどこかホッとした様子で、フェリクス様に深く一礼すると外へ出て行った。
そうしてこの場に残されたのはフェリクス様と私だけになる。
二人きりになるやいなや、フェリクス様は私の方へ近づいてきて、自分の着ていたコートを私の身体にかけてくれた。
コートにはまだ体温が残っていて、まるでフェリクス様に包み込むような抱擁をされているみたいだ。
安堵感が心の底から込み上げて、気が緩んだからか瞳に涙が滲む。
「遅くなってごめん。怖かったよね」
「フェリクス様……」
「怪我はない? 痛いところは?」
「大丈夫です。危ないところでしたが、フェリクス様が来てくださったので無事でした。助けて頂きありがとうございます」
「無事だったと言うけど、シェイラにこんな怖い思いをさせたという時点で僕はアイツらを許せない。こんな非道な計画を実行するなんて……。僕がもっと早く気づいていれば……」
座り込んでいる私と目線を合わせるため床に膝をついていたフェリクス様は、実に悔しそうに膝の上で拳を握った。
ふるふると震える拳がフェリクス様の溢れ出しそうな心の衝動を如実に伝えている。
……こんなに感情的なフェリクス様、珍しい。初めて見る気がするわ。
私のためにこれほど怒り、恨み、悔やみ……心を揺らしてくれているのだと思うと不謹慎にも嬉しさを感じずにはいられない。
「誰っスか! ヤバイ雰囲気っスよ!」
「おい、お前らあの男を捕えろ!」
突然の予期せぬ乱入者の登場に取り乱したのは男達だった。
そんな男達には目もくれず中に入って来たフェリクス様は、私の姿に目を留めると、凄まじい怒りを眉の辺りに這わせて全身に殺気を漂わせた。
「この建物は包囲している。お前達に逃げ場はない。もう一人の女もすでに捕縛済みだ」
そう言い放ったフェリクス様の声は耳にするだけで相手を身震いさせてしまうような声色だ。
にも関わらず、男達は逃亡を目論んで三人で一気にフェリクス様に飛び掛かり出した。
一対三、勝ち目あり、と思ったのだろう。
男達はニヤリと顔を歪ませる。
だが、フェリクス様はまるで虫でも追い払うかのように軽い手捌きで男達を一瞬で制圧してしまった。
一方的にのされた男達はフェリクス様のあまりの強さに驚愕し、恐怖を顔に張り付けている。
フェリクス様は無力化した男達をロープで縛り外へ連れて行くと、再び戻ってきて今度は隅の方でガタガタ震えている女の方へ目を向けた。
「お前が何者かも把握済みだ。同情すべき点は多少あるが、加担した以上罪は罪だ。大人しく外に出ていろ」
女の方は抵抗することはなく、絶望感で顔を固くしながらもどこかホッとした様子で、フェリクス様に深く一礼すると外へ出て行った。
そうしてこの場に残されたのはフェリクス様と私だけになる。
二人きりになるやいなや、フェリクス様は私の方へ近づいてきて、自分の着ていたコートを私の身体にかけてくれた。
コートにはまだ体温が残っていて、まるでフェリクス様に包み込むような抱擁をされているみたいだ。
安堵感が心の底から込み上げて、気が緩んだからか瞳に涙が滲む。
「遅くなってごめん。怖かったよね」
「フェリクス様……」
「怪我はない? 痛いところは?」
「大丈夫です。危ないところでしたが、フェリクス様が来てくださったので無事でした。助けて頂きありがとうございます」
「無事だったと言うけど、シェイラにこんな怖い思いをさせたという時点で僕はアイツらを許せない。こんな非道な計画を実行するなんて……。僕がもっと早く気づいていれば……」
座り込んでいる私と目線を合わせるため床に膝をついていたフェリクス様は、実に悔しそうに膝の上で拳を握った。
ふるふると震える拳がフェリクス様の溢れ出しそうな心の衝動を如実に伝えている。
……こんなに感情的なフェリクス様、珍しい。初めて見る気がするわ。
私のためにこれほど怒り、恨み、悔やみ……心を揺らしてくれているのだと思うと不謹慎にも嬉しさを感じずにはいられない。