平穏な生活を望む美貌の子爵令嬢は、王太子様に嫌われたくて必死です
「フェリクス様、確かに私は身分の高い男性と関わり合いたくなくて、フェリクス様からも嫌われたいとずっと思っていました。そのために色々仕掛けたのも事実です……その、見抜かれていたのはちょっと想定外ではありましたが」
「……そう。嫌われたい理由は僕の身分だったんだ」
「はい。私は昔から身分違いの恋や結婚は不幸なだけだと思っていて、だからこそ自分の身の丈に合わない方は避けたかったのです。……でも気持ちが変わりました」
「それは……」
「フェリクス様を好きになってしまったからです。今まで願っていた身の丈に合った平穏な暮らしを投げ捨ててもいいと思うほどに。だから今は嫌われたいとは思っていません。……その、今はむしろ好かれたいと思っています」
「シェイラ……!!」
思いの丈をありのままに口にした私に、フェリクス様は再び破顔して、今度は遠慮することなく私をギュッと抱き寄せた。
コートに残る体温に包まれるよりも、やはり本物は桁違いだ。
逞しい胸と力強い腕に抱きしめられて、心の底から湧き上がってくるような安心感を感じ、その心地良さにうっとりする。
「あー可愛い。本当に可愛い。必死で色仕掛けを頑張るシェイラも、嫉妬するシェイラも可愛いかったけど、僕のことを好きだと言うシェイラが一番可愛い。愛しくてたまんないなぁ」
もう離さないと言うように私を抱きしめるフェリクス様の腕にさらに力がこもる。
それに応えるように私もフェリクス様の背中に腕を回してさらに身を寄せた。
「シェイラが僕を想ってくれているのは伝わったよ。すごく嬉しい。ただ、まだ一つ分からないことがあるんだけど、聞いていい?」
「はい。なんですか?」
「なんでこの前泣いたの? 僕に抱きしめられるのは嫌ではなかったんだよね?」
ギルバート様とのことを知られたくない気持ちから一瞬ギクリとしたが、この密着状態ではそれもバレバレだった。
身を固くした私の顔をフェリクス様が覗き込む。
知られたくはないが、フェリクス様に対して嘘をついたり、隠し事をするつもりはない。
だから私は正直に当時の心境を打ち明けたのだが、それは笑顔だったフェリクス様を一瞬で鬼の形相に変えてしまった。
「フ、フェリクス様……?」
「ああ、ごめん。シェイラに対して怒ってるわけじゃないよ。……ただ、ギルバートにね。さて、どうしてくれようか」
フェリクス様のコバルトブルーの瞳が燃えるような妖しい光を宿している。
「……そう。嫌われたい理由は僕の身分だったんだ」
「はい。私は昔から身分違いの恋や結婚は不幸なだけだと思っていて、だからこそ自分の身の丈に合わない方は避けたかったのです。……でも気持ちが変わりました」
「それは……」
「フェリクス様を好きになってしまったからです。今まで願っていた身の丈に合った平穏な暮らしを投げ捨ててもいいと思うほどに。だから今は嫌われたいとは思っていません。……その、今はむしろ好かれたいと思っています」
「シェイラ……!!」
思いの丈をありのままに口にした私に、フェリクス様は再び破顔して、今度は遠慮することなく私をギュッと抱き寄せた。
コートに残る体温に包まれるよりも、やはり本物は桁違いだ。
逞しい胸と力強い腕に抱きしめられて、心の底から湧き上がってくるような安心感を感じ、その心地良さにうっとりする。
「あー可愛い。本当に可愛い。必死で色仕掛けを頑張るシェイラも、嫉妬するシェイラも可愛いかったけど、僕のことを好きだと言うシェイラが一番可愛い。愛しくてたまんないなぁ」
もう離さないと言うように私を抱きしめるフェリクス様の腕にさらに力がこもる。
それに応えるように私もフェリクス様の背中に腕を回してさらに身を寄せた。
「シェイラが僕を想ってくれているのは伝わったよ。すごく嬉しい。ただ、まだ一つ分からないことがあるんだけど、聞いていい?」
「はい。なんですか?」
「なんでこの前泣いたの? 僕に抱きしめられるのは嫌ではなかったんだよね?」
ギルバート様とのことを知られたくない気持ちから一瞬ギクリとしたが、この密着状態ではそれもバレバレだった。
身を固くした私の顔をフェリクス様が覗き込む。
知られたくはないが、フェリクス様に対して嘘をついたり、隠し事をするつもりはない。
だから私は正直に当時の心境を打ち明けたのだが、それは笑顔だったフェリクス様を一瞬で鬼の形相に変えてしまった。
「フ、フェリクス様……?」
「ああ、ごめん。シェイラに対して怒ってるわけじゃないよ。……ただ、ギルバートにね。さて、どうしてくれようか」
フェリクス様のコバルトブルーの瞳が燃えるような妖しい光を宿している。