平穏な生活を望む美貌の子爵令嬢は、王太子様に嫌われたくて必死です
◇◇◇
セイゲル語の見本会話を聞かせられていた貴族達は二人が何を話しているのかは理解できないながらも、その甘い雰囲気だけはしっかり肌で感じ取っていた。
王太子殿下と子爵令嬢が真実愛し合っているのは誰の目にも明らかだった。
そしてこの場にいる者は知った。
類稀な美貌を誇るアイゼヘルム子爵令嬢がただ美しいだけでなく、今後この国で必要とされる能力も持ち合わせているということを。
顔だけで中身が空っぽだと喚いていたストラーテン侯爵令嬢の台詞がいかにひどい言いがかりだったかということも露呈した形だ。
多くの者は見目麗しい二人の熱愛ぶりにほぉっと感嘆の息を吐き、まるで絵本の一ページのような様子に羨望の眼差しを送る。
またある者は今後重要人物になるであろうアイゼヘルム子爵令嬢とどう親交を得ようかと目を光らせる。
そんな中、この事態に一人顔を青くする者がいた。
バッケルン公爵家のギルバートだ。
シェイラと婚約破棄した過去がある上に、現婚約者のカトリーヌが醜態を晒したとあって、周囲からは冷ややかな目を向けられている。
それだけでなくギルバートは感じ取っていた。
自分に向けられる怒りに満ちた鋭い眼差しを。
それは他ならぬ王太子殿下からのものだ。
この場に姿を現した時より自分に向けてずっと放たれているのである。
それが意味することとは……王太子殿下は間違いなく自分がシェイラにしたことを知っているとギルバートは気が付き、恐怖に顔を引き攣らせた。
自分はカトリーヌのように断罪はされなかった。
だが、それは許されたということではない。
決して未来が明るいわけではないのだ。
王太子殿下に睨まれた以上、自分にはもはや出世の芽はなく、周囲からの蔑む目線に晒されながら落ちぶれていく未来しか残されていないのだとギルバートは悟らざるを得なかった――。
セイゲル語の見本会話を聞かせられていた貴族達は二人が何を話しているのかは理解できないながらも、その甘い雰囲気だけはしっかり肌で感じ取っていた。
王太子殿下と子爵令嬢が真実愛し合っているのは誰の目にも明らかだった。
そしてこの場にいる者は知った。
類稀な美貌を誇るアイゼヘルム子爵令嬢がただ美しいだけでなく、今後この国で必要とされる能力も持ち合わせているということを。
顔だけで中身が空っぽだと喚いていたストラーテン侯爵令嬢の台詞がいかにひどい言いがかりだったかということも露呈した形だ。
多くの者は見目麗しい二人の熱愛ぶりにほぉっと感嘆の息を吐き、まるで絵本の一ページのような様子に羨望の眼差しを送る。
またある者は今後重要人物になるであろうアイゼヘルム子爵令嬢とどう親交を得ようかと目を光らせる。
そんな中、この事態に一人顔を青くする者がいた。
バッケルン公爵家のギルバートだ。
シェイラと婚約破棄した過去がある上に、現婚約者のカトリーヌが醜態を晒したとあって、周囲からは冷ややかな目を向けられている。
それだけでなくギルバートは感じ取っていた。
自分に向けられる怒りに満ちた鋭い眼差しを。
それは他ならぬ王太子殿下からのものだ。
この場に姿を現した時より自分に向けてずっと放たれているのである。
それが意味することとは……王太子殿下は間違いなく自分がシェイラにしたことを知っているとギルバートは気が付き、恐怖に顔を引き攣らせた。
自分はカトリーヌのように断罪はされなかった。
だが、それは許されたということではない。
決して未来が明るいわけではないのだ。
王太子殿下に睨まれた以上、自分にはもはや出世の芽はなく、周囲からの蔑む目線に晒されながら落ちぶれていく未来しか残されていないのだとギルバートは悟らざるを得なかった――。