平穏な生活を望む美貌の子爵令嬢は、王太子様に嫌われたくて必死です
エピローグ
「さてフェリクス、詳しい話を聞かせてくれるな?」
「ええ、洗いざらいお話しなさい」
卒業パーティーの翌日。
私はフェリクス様とともに王城の謁見の間である方々の前で膝をついていた。
私だけでなくフェリクス様までもが膝をつく相手――そう、国王陛下と王妃殿下である。
あれだけ貴族達の注目を集めることをしでかしたのだから当然といえば当然だが、フェリクス様のご両親である陛下と王妃様に呼び出されたのだ。
ちなみにこの場には事情をよく知る者としてマルグリット様も同席している。
人前で堂々と求婚を受けておきながら、陛下と王妃様から呼び出されたと知った時には、私は大いに動揺した。
フェリクス様を想う以上、いつかは対峙しなければならないとは分かっていたが、まだ心の準備ができていなかったからだ。
目を白黒させる私に対してフェリクス様は「大丈夫。僕に任せておいて」とにこやかな顔を浮かべていた。
その言葉が心強くもあり、逆にそこはかとなく不安でもあり、非常に複雑な心境だ。
マルグリット様も一緒だと聞いた時の方がよっぽど安堵した私である。
そうして今この時を迎えているわけだが、私は初めてお目通りする陛下と王妃様を前に極度の緊張状態にいた。
なにしろこの国の頂点に君臨する方々だ。
雲の上の上の上くらいの存在であり、フェリクス様やマルグリット様という限りなく頂点に近い方とようやく接し慣れてきたただの子爵令嬢には荷が重い。
フェリクス様と私に目を向けるお二方は感情の読めない顔をしていて、それが余計に私の身をすくませる。
「話というのは、昨日の卒業パーティーのことでしょうか? それならその場で発言した通りですが。もう耳に入ってらっしゃるのでしょう?」
「多くの貴族が出席していたからな。もちろん話は聞いているとも。だが、わしは息子であるお前の口から詳しいことを聞きたいのだ」
「そう言われましても。ストラーテン侯爵令嬢の件は学園管理者として然るべき対応をとったまでですし、セイゲルとの外交方針や授業開講のことは父上に事前に報告してありましたよね?」
「フェリクス、お前わざとなのか? 一番重要なことをすっ飛ばしているではないか」
「ああ、シェイラのことですか? それでしたらあの場で宣言した通りですよ」
飄々とした態度で答えるフェリクス様になんだか陛下の方が焦れている感じだ。
そんなことを内心思いながら、口を閉ざして大人しく様子を窺っていた私だったが、ついに話の矛先が向かってくる。
「ええ、洗いざらいお話しなさい」
卒業パーティーの翌日。
私はフェリクス様とともに王城の謁見の間である方々の前で膝をついていた。
私だけでなくフェリクス様までもが膝をつく相手――そう、国王陛下と王妃殿下である。
あれだけ貴族達の注目を集めることをしでかしたのだから当然といえば当然だが、フェリクス様のご両親である陛下と王妃様に呼び出されたのだ。
ちなみにこの場には事情をよく知る者としてマルグリット様も同席している。
人前で堂々と求婚を受けておきながら、陛下と王妃様から呼び出されたと知った時には、私は大いに動揺した。
フェリクス様を想う以上、いつかは対峙しなければならないとは分かっていたが、まだ心の準備ができていなかったからだ。
目を白黒させる私に対してフェリクス様は「大丈夫。僕に任せておいて」とにこやかな顔を浮かべていた。
その言葉が心強くもあり、逆にそこはかとなく不安でもあり、非常に複雑な心境だ。
マルグリット様も一緒だと聞いた時の方がよっぽど安堵した私である。
そうして今この時を迎えているわけだが、私は初めてお目通りする陛下と王妃様を前に極度の緊張状態にいた。
なにしろこの国の頂点に君臨する方々だ。
雲の上の上の上くらいの存在であり、フェリクス様やマルグリット様という限りなく頂点に近い方とようやく接し慣れてきたただの子爵令嬢には荷が重い。
フェリクス様と私に目を向けるお二方は感情の読めない顔をしていて、それが余計に私の身をすくませる。
「話というのは、昨日の卒業パーティーのことでしょうか? それならその場で発言した通りですが。もう耳に入ってらっしゃるのでしょう?」
「多くの貴族が出席していたからな。もちろん話は聞いているとも。だが、わしは息子であるお前の口から詳しいことを聞きたいのだ」
「そう言われましても。ストラーテン侯爵令嬢の件は学園管理者として然るべき対応をとったまでですし、セイゲルとの外交方針や授業開講のことは父上に事前に報告してありましたよね?」
「フェリクス、お前わざとなのか? 一番重要なことをすっ飛ばしているではないか」
「ああ、シェイラのことですか? それでしたらあの場で宣言した通りですよ」
飄々とした態度で答えるフェリクス様になんだか陛下の方が焦れている感じだ。
そんなことを内心思いながら、口を閉ざして大人しく様子を窺っていた私だったが、ついに話の矛先が向かってくる。