平穏な生活を望む美貌の子爵令嬢は、王太子様に嫌われたくて必死です
すっかり噂も消え去り、穏やかな日常が戻って来たと思っていた最中。
また教室へ招かざる来訪者がやって来た。
もちろんフェリクス殿下ではない。
では誰かと言えば、先日一度お会いしたリオネル様だった。
そう、言わずと知れたフェリクス殿下の側近だ。
リオネル様がフェリクス殿下の側近であることは周知の事実であるため、リオネル様が私を呼んでいるとなれば、それをフェリクス殿下に結び付けるのは至極当然の思考回路である。
これによりまたしても教室内がザワザワと騒めき出し、注目を浴びてしまった。
……確かに約束通り本人は来てないけれど、フェリクス殿下の側近として知られている人が来たら同じだわ……!
やや申し訳なさそうな顔をするリオネル様を前に、私は頭を抱えるしかなかった。
さすがにちょっと文句が言いたくなって、リオネル様に連れて行かれた王族専用の部屋でフェリクス殿下に会った時、私は丁寧な口調を維持しながらも精一杯の抗議をした。
だというのに……
「ふふ、ごめんね。でもシェイラとの約束は守ったよ?」
楽しそうにニコニコ笑ったフェリクス殿下に軽くかわされてしまう。
全く響いていない上に、「そんなことよりコレ」と言ってなぜかセイゲル共和国のガラス細工の品物を贈られた。
窓際に吊るすことで太陽光を反射させ、虹色の光を生み出すサンキャッチャーというものらしい。
水の雫のようなガラスが複数連なっていて、吊るしていなくてもとても綺麗だ。
エーデワルド王国では見たことがない品物だった。
……セイゲル共和国の珍しい品物を戴けるのは嬉しいけれど、このような物を私に? 婚約者のような存在のマルグリット様が気分を害されなければいいのだけど、大丈夫なのかしら……?
私が心配することではないのだが、少々気になってしまう。
それにこうして何度も呼び出され、さらには贈り物までもらい、ようやく私はどうやら自分がフェリクス殿下に好意を持たれているようだと気づき始めた。
興味の対象というより、異性として好意を向けられているように感じたのだ。
……本気でどうしよう。ギルバート様以上に高貴な方なのに。身の丈に合った穏やかな生活からどんどん遠ざかっていくわ……。
フェリクス殿下との面会を終え、この先を思い描いてどうすべきか私は苦悩した。
どのようにしてフェリクス殿下から距離を置くかを頭の中でぐるぐる考える。
そんな私のもとに、またしても招かざる来訪者はやって来た。
今度はフェリクス殿下でも、リオネル様でもない。
面識のない一人の女性だった。
20代半ばに見えるため、おそらく生徒ではないと思われる。
その女性は私へ一通の手紙を差し出した。
受け取って中身に目を通すと、それはある方からのお茶会の招待状だった。
ある方――公爵令嬢のマルグリット様だ。
そう、私はフェリクス殿下の婚約者候補筆頭であり、実質の婚約者であるマルグリット様からついに呼び出しを受けてしまったのだった。
また教室へ招かざる来訪者がやって来た。
もちろんフェリクス殿下ではない。
では誰かと言えば、先日一度お会いしたリオネル様だった。
そう、言わずと知れたフェリクス殿下の側近だ。
リオネル様がフェリクス殿下の側近であることは周知の事実であるため、リオネル様が私を呼んでいるとなれば、それをフェリクス殿下に結び付けるのは至極当然の思考回路である。
これによりまたしても教室内がザワザワと騒めき出し、注目を浴びてしまった。
……確かに約束通り本人は来てないけれど、フェリクス殿下の側近として知られている人が来たら同じだわ……!
やや申し訳なさそうな顔をするリオネル様を前に、私は頭を抱えるしかなかった。
さすがにちょっと文句が言いたくなって、リオネル様に連れて行かれた王族専用の部屋でフェリクス殿下に会った時、私は丁寧な口調を維持しながらも精一杯の抗議をした。
だというのに……
「ふふ、ごめんね。でもシェイラとの約束は守ったよ?」
楽しそうにニコニコ笑ったフェリクス殿下に軽くかわされてしまう。
全く響いていない上に、「そんなことよりコレ」と言ってなぜかセイゲル共和国のガラス細工の品物を贈られた。
窓際に吊るすことで太陽光を反射させ、虹色の光を生み出すサンキャッチャーというものらしい。
水の雫のようなガラスが複数連なっていて、吊るしていなくてもとても綺麗だ。
エーデワルド王国では見たことがない品物だった。
……セイゲル共和国の珍しい品物を戴けるのは嬉しいけれど、このような物を私に? 婚約者のような存在のマルグリット様が気分を害されなければいいのだけど、大丈夫なのかしら……?
私が心配することではないのだが、少々気になってしまう。
それにこうして何度も呼び出され、さらには贈り物までもらい、ようやく私はどうやら自分がフェリクス殿下に好意を持たれているようだと気づき始めた。
興味の対象というより、異性として好意を向けられているように感じたのだ。
……本気でどうしよう。ギルバート様以上に高貴な方なのに。身の丈に合った穏やかな生活からどんどん遠ざかっていくわ……。
フェリクス殿下との面会を終え、この先を思い描いてどうすべきか私は苦悩した。
どのようにしてフェリクス殿下から距離を置くかを頭の中でぐるぐる考える。
そんな私のもとに、またしても招かざる来訪者はやって来た。
今度はフェリクス殿下でも、リオネル様でもない。
面識のない一人の女性だった。
20代半ばに見えるため、おそらく生徒ではないと思われる。
その女性は私へ一通の手紙を差し出した。
受け取って中身に目を通すと、それはある方からのお茶会の招待状だった。
ある方――公爵令嬢のマルグリット様だ。
そう、私はフェリクス殿下の婚約者候補筆頭であり、実質の婚約者であるマルグリット様からついに呼び出しを受けてしまったのだった。