平穏な生活を望む美貌の子爵令嬢は、王太子様に嫌われたくて必死です
「あの男に比べてリオネルといったら、とても真面目で誠実なの。ちょっと女心に鈍くて堅物すぎるところはあるけれど、そこもまたいいのよねぇ。ね、あなたもそう思うでしょう?」

「え? あ、はい。そうですね、二度お会いしましたがとても紳士的な方だと思いました」

「そうでしょ、そうでしょ。あなたってとっても見る目があって話の分かる方ね! 気に入ったわ! わたくしたちお友達になりましょう?」

驚きの事実の暴露で口が滑らかになったマルグリット様は、続けて想い人のリオネル様について語り出した。

止める手立てもなく、私は話に合わせて相槌をうつ。

すると大したことを言ってないにも関わらず、なぜか気に入られてしまった。

 ……ええっ!? なんでこんな展開になっているの!? フェリクス殿下といい、マルグリット様といい、圧倒的に高い身分の方って思考回路がよく分からないわ。

突然降りかかってきた筆頭公爵家のご令嬢からのお友達打診に私はどうしていいものか判断に迷い口ごもる。

ちょうどその時だ。

「お待ちくださいませ……!」

廊下の方からメイドの焦った声が聞こえたかと思うと、ノックもなく唐突に生徒会長室の扉が開け放たれた。

その場に現れたのはフェリクス殿下だ。

断りもなく中へ入ってきて、チラリと一瞬だけ私に視線を送ったのち、マルグリット様に鋭い眼差しを向ける。

対するマルグリットも好戦的な顔つきになっていて、二人の間には火花が散っていた。

「あら? ノックもせずに入ってくるなんて、なんて無作法なのかしら。王太子殿下にも呆れたものね」

「そちらこそ、生徒会と王族の会議をキャンセルしたかと思えば、なんでお茶会をしてるのかな? しかも僕に断りもなく勝手にシェイラを呼びつけるなんて」

「おかしなことを言うのね。彼女はあなたとは無関係なのだから、わたくしがお誘いするのは自由でしょう? それにわたくし達、お友達になったんですもの。そうでしょう、シェイラ?」

 ……この空気の中、私に話を振るの……!?
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