平穏な生活を望む美貌の子爵令嬢は、王太子様に嫌われたくて必死です
高貴なお二人の言い合いに私を巻き込むのは勘弁して欲しいと心の中で叫びながら、私はとりあえず曖昧な微笑みで切り抜けようと試みる。

私が明確に答えないでいると、マルグリット様はさらに言葉を重ねた。

「わたくしはこう見えても情に厚いの。お友達のためであれば全力を尽くすわ。この面倒な男からも守ってあげるわよ?」

「……!! マルグリット様のおっしゃる通りです。私たちはお友達になりました!」

それはフェリクス殿下から距離を取りたい私にとって願ってもない申し出だった。

一瞬で迷いは吹き飛び、即座にこの言葉に私は飛びつく。

「ほらね? ということで、わたくしはお友達と二人、水入らずでお茶会を楽しんでいるの。シェイラもあなたのことはお呼びでないわ。だから邪魔者はここから出て行ってくれるかしら?」

「くっ……」

マルグリット様はシッシッと虫を追い払うような仕草で、苦虫を噛み潰したような顔をしているフェリクス殿下をあっという間に部屋から追い出してしまった。

 ……す、すごい! あのフェリクス殿下をこうも簡単にあしらってしまうなんて!

「さぁ、シェイラ。予定外の乱入者がいたけれど、気を取り直してお茶会を楽しみましょう?」

「はい、マルグリット様……!!」


こうして私は、対フェリクス殿下において最強に頼りになるお友達を思いがけず手に入れたのだった。
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