平穏な生活を望む美貌の子爵令嬢は、王太子様に嫌われたくて必死です
正規のメンバーではないため、みんなが囲む長テーブルから離れた場所に控えている。
目の前では、主に学園長と生徒会メンバーが積極的な議論を交わしていた。
フェリクス殿下は一番上座の席に座り、基本的な口を挟まずに議論に耳を傾け、時折的確に質問や結論を述べている。
その表情は思いのほか真剣で、初めて目にする表情だった。
……にこやかに笑いながら、人を食ったような態度のフェリクス殿下しか見たことなかったけれど、こうして政務に取り組むお姿を間近で見るとやっぱり「無敵王子」と呼ばれるだけの能力なのがよく分かるわ。
さすがだとフェリクス殿下を見直していた私だったが、その時ふいに気になる議題が耳に飛び込んできた。
「――最後に最近増えている生徒からの陳述についてです。セイゲル語を教える授業を加えて欲しいとの要望が増えています」
「わたくしから補足させて頂くと、この要望の背景には昨今のセイゲル共和国の顕著な繁栄があると思われますわ。王都にあるマクシム商会の店舗でもセイゲルの珍しい品を取り扱っていて、それらが人気であることも一因のようです。加えて、殿下が学生時代に留学されていたという点からも、セイゲル語ができる者が将来的に王城で要職に就ける可能性があると考える男子生徒が多いようですわね」
生徒会メンバーの一人からの報告に、マルグリット様がさらに詳しい説明を加える。
セイゲルの話題とあって私も興味を引かれる内容だ。
それにしても授業が望まれるほどセイゲル語への関心が高まっているとは初耳だった。
説明を終えたマルグリット様は、名前を挙げたフェリクス殿下の方へ視線を向ける。
「セイゲル語か……」
その視線を受け止め、フェリクス殿下は顎に手を当て何か考えを巡らせる素振りをしながらポツリつぶやいた。
続いて何を思ったのか、わずかに唇の端を持ち上げるとなぜか私に視線を動かす。
楽しげな光を宿したコバルトブルーの瞳と一瞬視線が絡み、嫌な予感が背筋を冷たく流れる。
そしてそれは残念なことに的中してしまった。
「それならその要望に応えるために、そちらにいるシェイラ嬢に協力を願うのが良いんじゃないかな?」
突然フェリクス殿下の口から爆弾発言が投下されたのだ。
その場にいた学園長や生徒会長メンバーの目が一斉に私に集まる。
「シェイラの協力、ですって……?」
予想外の展開だったらしくマルグリット様も疑問を口にしながら珍しく感情を露わに目を丸くしていた。
目の前では、主に学園長と生徒会メンバーが積極的な議論を交わしていた。
フェリクス殿下は一番上座の席に座り、基本的な口を挟まずに議論に耳を傾け、時折的確に質問や結論を述べている。
その表情は思いのほか真剣で、初めて目にする表情だった。
……にこやかに笑いながら、人を食ったような態度のフェリクス殿下しか見たことなかったけれど、こうして政務に取り組むお姿を間近で見るとやっぱり「無敵王子」と呼ばれるだけの能力なのがよく分かるわ。
さすがだとフェリクス殿下を見直していた私だったが、その時ふいに気になる議題が耳に飛び込んできた。
「――最後に最近増えている生徒からの陳述についてです。セイゲル語を教える授業を加えて欲しいとの要望が増えています」
「わたくしから補足させて頂くと、この要望の背景には昨今のセイゲル共和国の顕著な繁栄があると思われますわ。王都にあるマクシム商会の店舗でもセイゲルの珍しい品を取り扱っていて、それらが人気であることも一因のようです。加えて、殿下が学生時代に留学されていたという点からも、セイゲル語ができる者が将来的に王城で要職に就ける可能性があると考える男子生徒が多いようですわね」
生徒会メンバーの一人からの報告に、マルグリット様がさらに詳しい説明を加える。
セイゲルの話題とあって私も興味を引かれる内容だ。
それにしても授業が望まれるほどセイゲル語への関心が高まっているとは初耳だった。
説明を終えたマルグリット様は、名前を挙げたフェリクス殿下の方へ視線を向ける。
「セイゲル語か……」
その視線を受け止め、フェリクス殿下は顎に手を当て何か考えを巡らせる素振りをしながらポツリつぶやいた。
続いて何を思ったのか、わずかに唇の端を持ち上げるとなぜか私に視線を動かす。
楽しげな光を宿したコバルトブルーの瞳と一瞬視線が絡み、嫌な予感が背筋を冷たく流れる。
そしてそれは残念なことに的中してしまった。
「それならその要望に応えるために、そちらにいるシェイラ嬢に協力を願うのが良いんじゃないかな?」
突然フェリクス殿下の口から爆弾発言が投下されたのだ。
その場にいた学園長や生徒会長メンバーの目が一斉に私に集まる。
「シェイラの協力、ですって……?」
予想外の展開だったらしくマルグリット様も疑問を口にしながら珍しく感情を露わに目を丸くしていた。