平穏な生活を望む美貌の子爵令嬢は、王太子様に嫌われたくて必死です
おそらくマルグリットはシェイラとの話し合いに同席すると十中八九主張するだろう。

僕としてはシェイラと二人で話したい。

邪魔者でしかないマルグリットは他に引き付けておく必要があるのだ。

それがリオネルである。

僕はマルグリットがリオネルのことを好いていることを知っている。

見ていれば明らかだからだ。

マルグリットとは幼少期からの付き合いであり、それこそリオネルよりも古い付き合いである。

双方の父親が将来的に婚姻を結ばせたいと願っていた結果、幼い頃から何度も顔を合わせていたからだ。

残念ながら父親達の思惑は上手くいかず、今に至っている。

なにしろ僕たちはお互いを面倒な奴だと認識しており、結婚なんてもってのほかだと思っている。

いわゆる同族嫌悪だ。

恵まれた身分と容姿により、何もせずとも周囲からチヤホヤされる点が全く同じだった。

マルグリットと接していれば、上辺だけ笑顔を作り、内心でつまらなさを感じている自分と同じ匂いを感じ取った。

似た者同士が仲良くなるということもあるようだが、僕たちの場合はそれが逆に働いた。

 ……似ているからこそ、マルグリットがシェイラに好感を持つのも、リオネルに好意を寄せるのも分かってしまうんだよね。

とはいえ、マルグリットの気持ちに気づいていても特にこれまでリオネルとの間を取り持つようなことはしなかった。

マルグリットは公の場では婚約者候補らしく「殿下」と呼んで慇懃な態度で振る舞っているが、裏では僕のことを「あの男」と散々に言っているのを知っている。

そんなマルグリットのために僕がそこまで気を利かせる義理もない。

学園に会議で訪れる際に僕があの庭へ息抜きに行く間だけは、リオネルと話せるようにほんの少しだけ配慮していたのだから、感謝されてもいいくらいだと思っている。

でも今、僕がシェイラと二人で話したい状況においては、リオネルを餌にしない手はない。

きっとマルグリットは食いつくはずだ。

似た者同士だからこそその心の動きを読むのは簡単なことだ。

マルグリットの気持ちなど何も気づいてないリオネルには、もっともらしい内容の頼み事をしたから大丈夫だろう。

真面目なリオネルは職務を全うしてくれると信じられる。

こんな算段で生徒会長室に辿り着いた僕だったが、そこからの流れはまるで未来を先読みしてきたかのようなものだった。
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