平穏な生活を望む美貌の子爵令嬢は、王太子様に嫌われたくて必死です
そうしている間にもシェイラはにっこり微笑みながらさらに僕への褒め言葉を紡ぐ。
……この感じ、なんだか既視感があるな。
そこでふと思い出したのは、夜会で僕にすり寄って来る令嬢達のことだ。
僕の関心を引こうとあの手この手で迫ってくる姿に今のシェイラは重なる。
……何が狙いか分からないけど、しばらく様子見も兼ねてシェイラに付き合ってみようかな。シェイラに褒められること自体は嬉しいしね。
上目遣いで見つめてくる珍しい姿のシェイラに目を向け、僕はにこりと笑顔を返す。
「シェイラが僕の容姿を褒めてくれるなんて珍しいね。でも嬉しいな」
率直な感想を述べつつ、お返しとばかりにシェイラのことをとことん褒め倒した。
容姿だけに限らず、内面にも言及し、最後には「そういうところも好きだなぁ」とハッキリ好意を口にした。
褒め言葉が返って来ることは予期していなかったのか、シェイラは目を丸くしている。
まだ褒め足りないし、どこが好きかも聞かせてあげたいくらいなのに、「もう十分です!」と言わんばかりの表情なのが残念だ。
「フェリクス様からお褒め頂けるなんて嬉しいです。……あら? フェリクス様、ここに何か付いているみたいですよ?」
驚いた顔からまたにこやかな微笑みに切り替わったシェイラは、何を思ったのかふいにソファーから立ち上がった。
その動きを目で追っていると、こちらへ近寄ってきて、ゴミが付いていると言って僕の肩へ触れる。
シェイラの方から僕に触れてくるとは思わなかったから、予想外のことに一瞬言葉を失った。
これが夜会で近寄ってくるような有象無象の令嬢達ならば、不快に感じたことだろう。
でもそれはシェイラには当てはまらない。
彼女に触れられるのは不快どころか嬉しく感じるくらいだ。
シェイラの指先から温かい体温が服越しに伝わってきて、気持ちが華やぐ。
チラリとシェイラに視線を向けると、彼女は自分から僕に触れてきたにも関わらず、頬をうっすら赤くして恥じらう様子があった。
加えて、まるで何かに必死に耐えるような表情も窺え、本意ではないが頑張って触れているという意図が透けて見える。
……この触れてくる感じも夜会での令嬢達のような振る舞いだ。なるほど、もしかするとそれを真似してるのかな? 僕がそういう女性を苦手にしているのをマルグリット辺りに聞いたんだろうね。
とすれば、シェイラの一連の珍しい言動のすべては僕に嫌われるためだと推測できる。
いやはや、やはり彼女は頑固で、なおかつ計算高い。
一筋縄では僕に心を許してはくれないようだ。
……シェイラがそのつもりなら、僕はこの状況を逆手に取るだけだ。
……この感じ、なんだか既視感があるな。
そこでふと思い出したのは、夜会で僕にすり寄って来る令嬢達のことだ。
僕の関心を引こうとあの手この手で迫ってくる姿に今のシェイラは重なる。
……何が狙いか分からないけど、しばらく様子見も兼ねてシェイラに付き合ってみようかな。シェイラに褒められること自体は嬉しいしね。
上目遣いで見つめてくる珍しい姿のシェイラに目を向け、僕はにこりと笑顔を返す。
「シェイラが僕の容姿を褒めてくれるなんて珍しいね。でも嬉しいな」
率直な感想を述べつつ、お返しとばかりにシェイラのことをとことん褒め倒した。
容姿だけに限らず、内面にも言及し、最後には「そういうところも好きだなぁ」とハッキリ好意を口にした。
褒め言葉が返って来ることは予期していなかったのか、シェイラは目を丸くしている。
まだ褒め足りないし、どこが好きかも聞かせてあげたいくらいなのに、「もう十分です!」と言わんばかりの表情なのが残念だ。
「フェリクス様からお褒め頂けるなんて嬉しいです。……あら? フェリクス様、ここに何か付いているみたいですよ?」
驚いた顔からまたにこやかな微笑みに切り替わったシェイラは、何を思ったのかふいにソファーから立ち上がった。
その動きを目で追っていると、こちらへ近寄ってきて、ゴミが付いていると言って僕の肩へ触れる。
シェイラの方から僕に触れてくるとは思わなかったから、予想外のことに一瞬言葉を失った。
これが夜会で近寄ってくるような有象無象の令嬢達ならば、不快に感じたことだろう。
でもそれはシェイラには当てはまらない。
彼女に触れられるのは不快どころか嬉しく感じるくらいだ。
シェイラの指先から温かい体温が服越しに伝わってきて、気持ちが華やぐ。
チラリとシェイラに視線を向けると、彼女は自分から僕に触れてきたにも関わらず、頬をうっすら赤くして恥じらう様子があった。
加えて、まるで何かに必死に耐えるような表情も窺え、本意ではないが頑張って触れているという意図が透けて見える。
……この触れてくる感じも夜会での令嬢達のような振る舞いだ。なるほど、もしかするとそれを真似してるのかな? 僕がそういう女性を苦手にしているのをマルグリット辺りに聞いたんだろうね。
とすれば、シェイラの一連の珍しい言動のすべては僕に嫌われるためだと推測できる。
いやはや、やはり彼女は頑固で、なおかつ計算高い。
一筋縄では僕に心を許してはくれないようだ。
……シェイラがそのつもりなら、僕はこの状況を逆手に取るだけだ。