地雷カプブルー

 僕がバス停の後ろに隠れているってバレたら、二人だけの世界に水を差してしまうのではと焦りにかられる。

 これ以上霞くんに嫌われたくないから、死活問題。

 お月さま、今日だけ僕の願いを叶えて。

 バスよ早く来て、僕が見つかる前に。

 早く早く、秒で到着して!


 「あっ、あいつって」


 月への必死な願いは届かなかったと、奏多くんの驚き声で知る。

 闇に響いていた二人の足音が消えた。

 僕は顔を上げられない。

 右腕の傷跡を霞くんに見られないようにと、まくっていた袖を手の甲まで急いで伸ばす。

 バス停になりきりたくて、透明人間になりたくて、さらに時刻表に体をくっつけるも無意味でしかなくて、空しくて。


 「バス停の横に立ってるの、カスミと同じクラスの奴だよな? 調理部の。名前は確か……」

 「萌黄(もえぎ)くんだよ」


 もう名前では呼んでくれないのか……

 人物の特定までされてしまい、僕はゆっくりとバス停から顔だけを出した。

 もちろん得意の作り笑顔を顔に張りつけて。

 離れたところに立つ二人に向かって、ゆるふわ髪が弾むほどオーバーに頭を下げ、すぐさま顔をバス停で隠す。

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