地雷カプブルー

 悲しみが僕の表情筋を殺そうとする。

 でも必死に抵抗。

 作り笑いは消したくなくて。

 作り笑いは自分の心を偽る行為。

 そんなことをして心が無傷ではいられないことは100も承知。

 笑顔で悲しみに蓋をしているわけだから、そこそこの代償があるわけで。

 いま僕は作り笑いをしちゃっているんだ……

 むなしさを自覚した直後、心がトラックにひかれたような激痛にいつも襲われてしまう。

 まさに今も心臓が苦しい。

 悲しみを吐き出す術を身につけないと、精神が崩壊する日が来てしまうだろうな。近い将来、間違いなく。


 「やっぱりもう一個、玉子を追加しよう」

 調理室の冷蔵庫に向かい、ボールに卵を割り入れる。

 手についた白身のベタベタが負の感情とリンクしているようで、闇を消したくて石けんで念入りにぬめりを落とした。


 報われない想い。

 幼稚園から抱き続けている恋心。

 さい銭箱に500円玉10枚を投げ入れて『霞くんの恋人にしてください』なんてお願いをしたら

 『無理難題を押しつけられても困る。目が合っても無視されているじゃないか。嫌われているんだ諦めろ』

 迷惑極まりないと言わんばかりのため息をこぼす神様に、おさい銭を投げ返されるだろう。

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