地雷カプブルー
クラスも一緒の流瑠ちゃんは僕の親友で、部活中の今は火の番人。
コンロの前に立ちグツグツうなる鍋の中を覗き込みながら不満げに眉を下げているあたり、ハートの中に雨雲がいらっしゃるもよう。
「嫌なことでもあった?」と僕が声をかけた直後に顔を上げ、鋭くギロリ。
あぁ、いつものですか。
今日はこのタイミングできましたか。
「ねぇテラっち、いつになったら私の妄想が現実になってくれると思う?」
ネコ目がふてくされている。
それもいつもの質問ですね。
「待っても待っても推しカプが進展しないの」
はぁぁぁ、親友を心配して損した。
「校内で絡んで欲しいのに。おはようって笑い合って、頭ナデナデからのハグ。誰にも見られない校舎裏でね。それを私だけが見ちゃうとか。うん、おいしい。そのシチュに出くわしたい!」
さっきまでの雨雲はどこへやら。
腐に片足を突っこみ中の流瑠ちゃんの顔が、にやけることにやけること。
誰についての愚痴かは言及していない。
でも僕にはわかる、出会った高1から耳ダコだから。
流瑠ちゃんの前では80のパーセンテージで喜怒哀楽を表現できる僕は、わざとらしいため息をこぼす。
誰にも聞かれたくなくて、流瑠ちゃんの耳元で声量をしぼった。