地雷カプブルー

 「あそこ」と窓の外を指さして、しまったと後悔が追いつく。

 霞くんから注意をそらす作戦だったのに、流瑠ちゃんの視線を戻すことになってしまった。

 この子をコントロールなんて無理か。

 流れに任せようと思い直し、僕あえて窓と対面する。


 「今だってテニスコートの周りにたくさんの女子が集まってる。キャーキャー飛び跳ねてるし。あの子たちみんな、霞くんと奏多くんカプを拝みに来てるんだよ。それなのになんで流瑠ちゃんは、僕と霞くんをくっつけようとするかな」

 「だって私は小学生の時に……」


 僕と霞くんがペアを組んで出たテニスの試合を、たまたま見たんだよね。

 前衛の僕が弱すぎるせいで惨敗だった。

 それでも霞くんは、この先も僕とペアを組むと譲らなかった。

 僕以外と組まされるならテニスをやめるとコーチを困らせていた。

 僕だけに笑って、僕だけに心を許して、他の人は拒絶で。

 あの頃と今とでは違う。

 霞くんからの気に入られ度も、お互いの距離感も、霞くんが僕に向ける視線の温度も、なにもかも。

< 9 / 131 >

この作品をシェア

pagetop