婚約破棄された錬金術師ですが、暗黒地底に放り出されたら冷徹な辺境伯様との楽しい毎日が始まりました
第25話:頼み
お屋敷の図書館で本をめくる。
手紙を待つ間、私は地底屋敷にある本や資料を、もう一度読み直すことにした。
数週間くらいかかるかもしれないそうなので、少しでも知識を蓄えておこうと思ったのだ。 メモを取りながら本を読んでいると、コンコンッと本棚が控えめにノックされた。
アース様だ。
「勉強中すまない。ちょっといいか?」
「ええ、もちろんです。どうぞご遠慮なさらずに」
羽ペンを机に置き、椅子から立ち上がる。
アース様は私の前に来てお話しする。
「フルオラ、君に作ってほしいものがあるのだが……」
「はいっ、何でしょうかっ。何でもお作りいたしますっ」
「そ、そうか、頼りになるな。できれば、もう少し顔を離していただけるとありがたいのが……」
「……大変申し訳ございませんでした」
うわーい、錬金術だ! と興奮していたら、思ったよりアース様の顔が目の前にあった。
悪癖も顔を出してしまったね。
気をつけないと。
アース様はこほんっと咳払いする。
「さて、作ってほしい魔導具だが、ちょっと説明がしにくくてな。なんというか……君の姿が見えなくなったとき、すぐに居場所を知らせてくれるような魔導具がほしいのだ」
「私の居場所を……でございますか?」
どんな魔導具だろう、と考えていたら、アース様は続きの説明をしてくれた。
「国王陛下は夜会がお好きな方だ。手紙には君の実力も記したから、興味を抱いたに違いない。きっと……というか、ほぼ必ず夜会が開かれる」
「さ、さようでございますか……」
緊張でゴクリと唾を飲む。
知らないうちに、意外と王様との距離が近くなっていた。
「この前の"錬金博覧会”には、大勢の参加者が来ただろう? 宮殿の夜会ともなれば、さらに大人数が来る。君はそれほど身体が大きくないから、人混みに紛れてしまうと見えなくなりそうなんだ。もちろん、私も目を離さないようにするが、万が一に備えておきたい」
「なるほど、そういう用途でございましたか」
要するに、現代でいう防犯アイテム的な魔導具とのことだった。
前世の知識を利用すれば設計できそうだ。
「難しい注文だが、どうだろうか……」
「大丈夫です、問題ありません。私の身の安全を配慮してくださりありがとうございます」
感謝を込めて丁寧にお辞儀する。
アース様のお気遣いが嬉しかった。
ふいに静かに鳴り、図書室の中を静寂が包む。
「ああ……君は私にとって欠かせない人間だからな」
顔を上げると、穏やかな笑みのアース様がいた。
私の中では、もう馴染みのある表情になっていた。
図書室を出て、アース様と一緒に素材庫へ向かう。
その華奢だけど力強い背中を見ているとやる気があふれる。
使いやすくて有用な魔導具を作るぞ!
手紙を待つ間、私は地底屋敷にある本や資料を、もう一度読み直すことにした。
数週間くらいかかるかもしれないそうなので、少しでも知識を蓄えておこうと思ったのだ。 メモを取りながら本を読んでいると、コンコンッと本棚が控えめにノックされた。
アース様だ。
「勉強中すまない。ちょっといいか?」
「ええ、もちろんです。どうぞご遠慮なさらずに」
羽ペンを机に置き、椅子から立ち上がる。
アース様は私の前に来てお話しする。
「フルオラ、君に作ってほしいものがあるのだが……」
「はいっ、何でしょうかっ。何でもお作りいたしますっ」
「そ、そうか、頼りになるな。できれば、もう少し顔を離していただけるとありがたいのが……」
「……大変申し訳ございませんでした」
うわーい、錬金術だ! と興奮していたら、思ったよりアース様の顔が目の前にあった。
悪癖も顔を出してしまったね。
気をつけないと。
アース様はこほんっと咳払いする。
「さて、作ってほしい魔導具だが、ちょっと説明がしにくくてな。なんというか……君の姿が見えなくなったとき、すぐに居場所を知らせてくれるような魔導具がほしいのだ」
「私の居場所を……でございますか?」
どんな魔導具だろう、と考えていたら、アース様は続きの説明をしてくれた。
「国王陛下は夜会がお好きな方だ。手紙には君の実力も記したから、興味を抱いたに違いない。きっと……というか、ほぼ必ず夜会が開かれる」
「さ、さようでございますか……」
緊張でゴクリと唾を飲む。
知らないうちに、意外と王様との距離が近くなっていた。
「この前の"錬金博覧会”には、大勢の参加者が来ただろう? 宮殿の夜会ともなれば、さらに大人数が来る。君はそれほど身体が大きくないから、人混みに紛れてしまうと見えなくなりそうなんだ。もちろん、私も目を離さないようにするが、万が一に備えておきたい」
「なるほど、そういう用途でございましたか」
要するに、現代でいう防犯アイテム的な魔導具とのことだった。
前世の知識を利用すれば設計できそうだ。
「難しい注文だが、どうだろうか……」
「大丈夫です、問題ありません。私の身の安全を配慮してくださりありがとうございます」
感謝を込めて丁寧にお辞儀する。
アース様のお気遣いが嬉しかった。
ふいに静かに鳴り、図書室の中を静寂が包む。
「ああ……君は私にとって欠かせない人間だからな」
顔を上げると、穏やかな笑みのアース様がいた。
私の中では、もう馴染みのある表情になっていた。
図書室を出て、アース様と一緒に素材庫へ向かう。
その華奢だけど力強い背中を見ているとやる気があふれる。
使いやすくて有用な魔導具を作るぞ!