婚約破棄された錬金術師ですが、暗黒地底に放り出されたら冷徹な辺境伯様との楽しい毎日が始まりました
第27話:計画(Side:ペルビア④)
「さあ、どうぞ、ヴェンディエール公爵。メルキュール家で最高品質の紅茶でございます」
「うむ、ありがとう」
「たくさんありますので、お好きなだけお飲みくださいませ」
店の奥にある小部屋で、お義姉様に買わせたとっておきの紅茶を出す。
一杯で普通の紅茶十袋分はあるほどの高価な紅茶。
上位貴族の令息が訪ねてきたときのために、用意しておいたのだ。
ちょうどいい機会ね。
もちろん、ナルヒン様如きには一度も出したことはない。
ヴェンディエール公爵は紅茶を飲むと、静かにカップをテーブルに置いた。
「さて、さっそくだが本題に入ろう。……我が輩はこの国でクーデターを起こすつもりだ」
「「え……ク、クーデター……!?」」
その言葉に、私とナルヒン様は思わず大きな声を出してしまった。
急いで口に手を当てる。
クーデターとは、武力で政権を奪う行為だ。
平和を乱す行為として、当然の如く重罪に問われる。
こ、この人はなんてことを考えているの。
動揺する私たちを差し置いて、ヴェンディエール公爵は落ち着いた様子で紅茶を飲む。
「我が輩はずっと機を窺っていた。準備は順調に進み、ようやくクーデター計画が実行に移せる段階にきた。だが、同時に新たな脅威が生まれた。フルオラ嬢の錬金術だ。強力な魔導具を王国側に提供されると、クーデターを妨害される可能性がある」
「だから……お義姉様を誘拐しようと考えてらっしゃるのですか?」
「察しがいいな。さすがは優秀なペルビア嬢だ」
「は、はぁ……」
ヴェンディエール公爵はご機嫌に笑うも、あたくしは笑うことなどできず顔が硬くなるのを感じた。
傍らのナルヒン様もそうだ。
張り詰めたような表情であたくしを見る。
ただお義姉様を誘拐していじめるだけだと思っていた。
先ほどまでは楽しみでしょうがなかったのに、今やその気持ちはすっかり落ち込んでしまった。
静かに俯く私たちに、ヴェンディエール公爵は怪訝な表情を浮かべる。
「……どうした? 君たちはフルオラ嬢が嫌いだと思っていたが? 復讐の良い機会だろう」
「「そ、それは、そうですが……」」
さすがにちょっと気が引けた。
もし捕まったらどうなっちゃうのよ。
怖じ気づくあたくしたちを見て、ヴェンディエール公爵は不気味な笑みを浮かべる。
「もちろん、我が輩に協力してくれれば君たちの望みも叶える。我が輩が国を奪った暁には、新生ビノザンド王国の要職につけることを約束しよう」
「「……要職?」」
その言葉を聞いて、不安や心配が和らぐのを感じた。
なかなかに魅力的な単語……。
ごくりと唾を飲むと、ヴェンディエール公爵はニタリとした笑みを浮かべる。
「我が輩は宮殿にも日常的に出入りしている。宮殿に届く文書を密かに確認した結果、有益な情報を得ることができた。近日、フルオラ嬢が王立図書館の入室許可を得るため、地底辺境伯と宮殿に来るらしい。どうやら、地底辺境伯に頼んだようだ。また、国王の許可も確認された」
「え! お義姉様が宮殿に来るのですか!? いつ!?」
「落ち着きたまえ、ペルビア嬢。近日と言っただろう」
宮殿なんて、いくら貴族でもおいそれと入れる場所ではない。
メルキュール家みたいな男爵ならなおさらだ。
ナルヒン様のような伯爵でも難しい。
それを地底辺境伯の身分を利用して、自分だけ抜け駆けしたのだ。
あたくしだってまだ入ったことはないのに~!
先取りされた気分になってイライラする。
だったら、あたくしが全部ぶち壊してやるわ。
「……ヴェンディエール公爵、詳しく聞かせていただけるかしら?」
「お、おい、ペルビアッ。本気かよっ、クーデターなんて……ぐあああっ」
テーブルの下で、臆病なナルヒン様の足を踏みつける。
こんな貴重なチャンス、みすみす逃してなるものですか。
ヴェンディエール公爵は満足げに笑うと、静かに話し出した。
「では、計画を話す。なに、簡単なことだ。我が輩が君たちを宮殿内に手引きして……」
お義姉様の誘拐計画を聞く。
聞けば聞くほど、クーデターに魅力を感じる。
王国の権力を手中に収めたあたくしの図……。
希少な宝石も高価なドレスも全て自分の物。
なんでも、自分が命じた通りになる。
まさしく、夢のようね。
見ていなさい、お義姉様。
――最後に勝つのはこのあたくし、ペルビアなんだから。
「うむ、ありがとう」
「たくさんありますので、お好きなだけお飲みくださいませ」
店の奥にある小部屋で、お義姉様に買わせたとっておきの紅茶を出す。
一杯で普通の紅茶十袋分はあるほどの高価な紅茶。
上位貴族の令息が訪ねてきたときのために、用意しておいたのだ。
ちょうどいい機会ね。
もちろん、ナルヒン様如きには一度も出したことはない。
ヴェンディエール公爵は紅茶を飲むと、静かにカップをテーブルに置いた。
「さて、さっそくだが本題に入ろう。……我が輩はこの国でクーデターを起こすつもりだ」
「「え……ク、クーデター……!?」」
その言葉に、私とナルヒン様は思わず大きな声を出してしまった。
急いで口に手を当てる。
クーデターとは、武力で政権を奪う行為だ。
平和を乱す行為として、当然の如く重罪に問われる。
こ、この人はなんてことを考えているの。
動揺する私たちを差し置いて、ヴェンディエール公爵は落ち着いた様子で紅茶を飲む。
「我が輩はずっと機を窺っていた。準備は順調に進み、ようやくクーデター計画が実行に移せる段階にきた。だが、同時に新たな脅威が生まれた。フルオラ嬢の錬金術だ。強力な魔導具を王国側に提供されると、クーデターを妨害される可能性がある」
「だから……お義姉様を誘拐しようと考えてらっしゃるのですか?」
「察しがいいな。さすがは優秀なペルビア嬢だ」
「は、はぁ……」
ヴェンディエール公爵はご機嫌に笑うも、あたくしは笑うことなどできず顔が硬くなるのを感じた。
傍らのナルヒン様もそうだ。
張り詰めたような表情であたくしを見る。
ただお義姉様を誘拐していじめるだけだと思っていた。
先ほどまでは楽しみでしょうがなかったのに、今やその気持ちはすっかり落ち込んでしまった。
静かに俯く私たちに、ヴェンディエール公爵は怪訝な表情を浮かべる。
「……どうした? 君たちはフルオラ嬢が嫌いだと思っていたが? 復讐の良い機会だろう」
「「そ、それは、そうですが……」」
さすがにちょっと気が引けた。
もし捕まったらどうなっちゃうのよ。
怖じ気づくあたくしたちを見て、ヴェンディエール公爵は不気味な笑みを浮かべる。
「もちろん、我が輩に協力してくれれば君たちの望みも叶える。我が輩が国を奪った暁には、新生ビノザンド王国の要職につけることを約束しよう」
「「……要職?」」
その言葉を聞いて、不安や心配が和らぐのを感じた。
なかなかに魅力的な単語……。
ごくりと唾を飲むと、ヴェンディエール公爵はニタリとした笑みを浮かべる。
「我が輩は宮殿にも日常的に出入りしている。宮殿に届く文書を密かに確認した結果、有益な情報を得ることができた。近日、フルオラ嬢が王立図書館の入室許可を得るため、地底辺境伯と宮殿に来るらしい。どうやら、地底辺境伯に頼んだようだ。また、国王の許可も確認された」
「え! お義姉様が宮殿に来るのですか!? いつ!?」
「落ち着きたまえ、ペルビア嬢。近日と言っただろう」
宮殿なんて、いくら貴族でもおいそれと入れる場所ではない。
メルキュール家みたいな男爵ならなおさらだ。
ナルヒン様のような伯爵でも難しい。
それを地底辺境伯の身分を利用して、自分だけ抜け駆けしたのだ。
あたくしだってまだ入ったことはないのに~!
先取りされた気分になってイライラする。
だったら、あたくしが全部ぶち壊してやるわ。
「……ヴェンディエール公爵、詳しく聞かせていただけるかしら?」
「お、おい、ペルビアッ。本気かよっ、クーデターなんて……ぐあああっ」
テーブルの下で、臆病なナルヒン様の足を踏みつける。
こんな貴重なチャンス、みすみす逃してなるものですか。
ヴェンディエール公爵は満足げに笑うと、静かに話し出した。
「では、計画を話す。なに、簡単なことだ。我が輩が君たちを宮殿内に手引きして……」
お義姉様の誘拐計画を聞く。
聞けば聞くほど、クーデターに魅力を感じる。
王国の権力を手中に収めたあたくしの図……。
希少な宝石も高価なドレスも全て自分の物。
なんでも、自分が命じた通りになる。
まさしく、夢のようね。
見ていなさい、お義姉様。
――最後に勝つのはこのあたくし、ペルビアなんだから。