婚約破棄された錬金術師ですが、暗黒地底に放り出されたら冷徹な辺境伯様との楽しい毎日が始まりました
第32話:図書室にて
「フルオラ、ここが王立図書館だ」
「うわぁ……ずいぶんと広いですね」
「国内最大の図書館だからな。中も相当に広い」
王立図書館は宮殿の一角にあった。
アース様も以前来たことがあるそうで、すらすらと案内してくれた。
五階建てのレンガ作りな建物で、図書館というよりは美術館を思わせる荘厳な雰囲気だ。
落ち着いたベージュとシックな赤の配色が美しい。
中に入ると、それはもうたくさんの本たちが眼に飛び込んでくる。
棚に収められた背表紙のカラフルな色合いが、それ自体が絵画のように美しい。
背の高い本棚を見上げながら、思わずアース様に聞いてしまった。
「ここには何冊くらい所蔵されているんですか? すごい量なのは想像つきますが……」
「千五百万冊と聞いている」
「せ、千五百万冊!? ……それはとてつもない所蔵量ですね」
思った以上にたくさんの本が納められているみたいで、大変に驚いた。
きっと、古今東西ありとあらゆる蔵書が揃っているのだろう。
中を歩くだけで気持ちが昂ぶる。
なんだか歴史を散歩しているみたい。
前世から、私は図書館が大好きだった。
歩くだけで楽しいね。
メルキュール家の書庫や近隣の図書室も本はたくさんあったけど、ここはそれら以上だ。
「フルオラ、魔導具作りにはどんな本を調べればいだろうか」
「はい、魔導具に関する本と、地学に関する本を読みたいです」
「わかった」
アース様が司書さんに聞いてくれ、魔導具の本は一階、地学の本は二階の奥にあるとわかった。
先に地学を確認することになったので、二階に上がり資料を探す。
室内全体ではなく一角の小さなスペースだけど、それでも数多くの本がある。
「地熱に関する本があるとありがたいんのですが……」
「よし、手分けして探そう」
私は右から、アース様は左から探す。
この世界で地学などの理系的な学問がどれほど発達しているかはわからないけど、そんな心配は要らないくらい本がある。
魔法が発展しているからかな。
棚を回り裏面に来たところで、興味深い本が見つかった。
"地底洞窟と地熱の関係について”……という表紙だ。
これは読んでみなければ。
そっと手を伸ばすと、誰かの指にぶつかった。
白魚のように美しいけど、頼りがいのある力強さも感じる指に……。
「「……あっっ」」
……アース様だ。
ちょうど同じ本を取ろうとしたようで、指と指が触れ合ってしまった。
慌てて同時に手を引っ込める。
「す、すまないっ、本に夢中で君に気づかなかったっ。怪我はしてないかっ」
「こ、こちらこそ、ぶつかってしまって失礼しましたっ。お怪我はありませんかっ」
二人して似たようなやりとりをする。
ただ指が触れただけなのに、こんなに緊張するのはどうしてだろう。
もじもじしていたら、結局アース様が取って私に渡してくれた。
「さ、さあ、他にも資料が必要だろう。手分けして探そうか」
「そ、そうですね。お願いします」
気を取り直してアース様と二手に分かれ、本を探す。
今度は魔導具作りの資料を見つけた。
"自然エネルギーを利用した錬金術”……という題。
うん、いい感じ。
「「……あっ」」
読みたい本を見つけるたび、アース様と指がぶつかってしまうのはなぜ。
不思議……。
何はともあれ、本を探して指がぶつかりしているうちに、十冊ほどの素晴らしい資料が集まった。
じっくり読んで勉強しよう。
アース様が壁掛け時計を見る。
知らないうちに、小一時間ほど過ぎていた。
「……フルオラ、そろそろ出るか。この後は夜会だから、早めに準備した方が良いだろう」
「そうですね。一度カリステンさんのお店に戻りましょう」
資料探しは一旦終わりにして、夜会へ向かうことになった。
本を持って(アース様が半分以上持ってくれた)、図書館の外に出る。
王様には悪いけど、インドアな私にとっては気が滅入らないといったら嘘になる。
夜会かぁ……人がたくさんくるんだろうな。
――大きな集まりはあまり好きではないけど、アース様がいればいい。
隣を歩くアース様の顔をそっと見上げると、自然とそう思えた。
「うわぁ……ずいぶんと広いですね」
「国内最大の図書館だからな。中も相当に広い」
王立図書館は宮殿の一角にあった。
アース様も以前来たことがあるそうで、すらすらと案内してくれた。
五階建てのレンガ作りな建物で、図書館というよりは美術館を思わせる荘厳な雰囲気だ。
落ち着いたベージュとシックな赤の配色が美しい。
中に入ると、それはもうたくさんの本たちが眼に飛び込んでくる。
棚に収められた背表紙のカラフルな色合いが、それ自体が絵画のように美しい。
背の高い本棚を見上げながら、思わずアース様に聞いてしまった。
「ここには何冊くらい所蔵されているんですか? すごい量なのは想像つきますが……」
「千五百万冊と聞いている」
「せ、千五百万冊!? ……それはとてつもない所蔵量ですね」
思った以上にたくさんの本が納められているみたいで、大変に驚いた。
きっと、古今東西ありとあらゆる蔵書が揃っているのだろう。
中を歩くだけで気持ちが昂ぶる。
なんだか歴史を散歩しているみたい。
前世から、私は図書館が大好きだった。
歩くだけで楽しいね。
メルキュール家の書庫や近隣の図書室も本はたくさんあったけど、ここはそれら以上だ。
「フルオラ、魔導具作りにはどんな本を調べればいだろうか」
「はい、魔導具に関する本と、地学に関する本を読みたいです」
「わかった」
アース様が司書さんに聞いてくれ、魔導具の本は一階、地学の本は二階の奥にあるとわかった。
先に地学を確認することになったので、二階に上がり資料を探す。
室内全体ではなく一角の小さなスペースだけど、それでも数多くの本がある。
「地熱に関する本があるとありがたいんのですが……」
「よし、手分けして探そう」
私は右から、アース様は左から探す。
この世界で地学などの理系的な学問がどれほど発達しているかはわからないけど、そんな心配は要らないくらい本がある。
魔法が発展しているからかな。
棚を回り裏面に来たところで、興味深い本が見つかった。
"地底洞窟と地熱の関係について”……という表紙だ。
これは読んでみなければ。
そっと手を伸ばすと、誰かの指にぶつかった。
白魚のように美しいけど、頼りがいのある力強さも感じる指に……。
「「……あっっ」」
……アース様だ。
ちょうど同じ本を取ろうとしたようで、指と指が触れ合ってしまった。
慌てて同時に手を引っ込める。
「す、すまないっ、本に夢中で君に気づかなかったっ。怪我はしてないかっ」
「こ、こちらこそ、ぶつかってしまって失礼しましたっ。お怪我はありませんかっ」
二人して似たようなやりとりをする。
ただ指が触れただけなのに、こんなに緊張するのはどうしてだろう。
もじもじしていたら、結局アース様が取って私に渡してくれた。
「さ、さあ、他にも資料が必要だろう。手分けして探そうか」
「そ、そうですね。お願いします」
気を取り直してアース様と二手に分かれ、本を探す。
今度は魔導具作りの資料を見つけた。
"自然エネルギーを利用した錬金術”……という題。
うん、いい感じ。
「「……あっ」」
読みたい本を見つけるたび、アース様と指がぶつかってしまうのはなぜ。
不思議……。
何はともあれ、本を探して指がぶつかりしているうちに、十冊ほどの素晴らしい資料が集まった。
じっくり読んで勉強しよう。
アース様が壁掛け時計を見る。
知らないうちに、小一時間ほど過ぎていた。
「……フルオラ、そろそろ出るか。この後は夜会だから、早めに準備した方が良いだろう」
「そうですね。一度カリステンさんのお店に戻りましょう」
資料探しは一旦終わりにして、夜会へ向かうことになった。
本を持って(アース様が半分以上持ってくれた)、図書館の外に出る。
王様には悪いけど、インドアな私にとっては気が滅入らないといったら嘘になる。
夜会かぁ……人がたくさんくるんだろうな。
――大きな集まりはあまり好きではないけど、アース様がいればいい。
隣を歩くアース様の顔をそっと見上げると、自然とそう思えた。