婚約破棄された錬金術師ですが、暗黒地底に放り出されたら冷徹な辺境伯様との楽しい毎日が始まりました
第35話:夜に響く
「ア、アース様! 来てくださったのですね!」
「遅くなってすまない。怪我はないか?」
「は、はい、私は大丈夫です。助かりました」
アース様はペルビアから視線を離さずに言う。
見たことないくらい厳しい表情に、こんなときなのにドキリとしてしまった。
「君はペルビアだな。フルオラを襲うとはいい度胸だ。自分がどんな末路を迎えるか……覚悟しているだろうな」
「ち、地底辺境伯……」
ペルビアは恐ろしい鬼でも見たかのような、恐怖の表情だ。
普段のアース様は落ち着いてらっしゃるけど、このときばかりはわずかに震える背中から相当の怒りが伝わった。
アース様は守るように私を優しく抱きながら、腰に下げた剣を引き抜く。
月明かりを反射して、眩しいほどに刀身がギラリと輝いた。
「以前"錬金博覧会”でも言ったと思うが、フルオラを侮辱したり傷つけようとする者は誰であろうと許さない。……死をもって償いたまえ」
「あ……い、いや……あたくしはただ……」
アース様にすごまれると、ペルビアはぱたり……と気を失ってしまった。
ピクリとも動かない様子と怯えきった表情から、本当に怖かったのだと思う。
すかさず、アース様は会場に向かって叫ぶ。
「衛兵、来てくれ! 侵入者だ!」
「「グラウンド卿! どうされましたか!」」
アース様が呼びかけるとすぐに衛兵が駆けつけてくれ、ペルビアとナルヒン様は瞬く間に縄で縛られてしまった。
騒ぎを聞きつけ、会場から貴族や王様が顔を出す。
「グラウンド卿、何があったのじゃ!?」
「賊の侵入です。ですが、ご心配なく。もうすでに対処しました」
「そうか、さすがグラウンド卿じゃの。じゃが、侵入を許すとは警備をより強固にせねばならんな。……衛兵よ、他に侵入者がいないか宮殿中を調べるんじゃ!」
「「はっ!」」
王様が呼びかけると、何人もの衛兵たちが宮殿中に走る。
たぶん侵入者はあの二人だけだろうけど、他にもいたら大変だものね。
ペルビアとナルヒン様が衛兵に連れ去られるのを見届けると、アース様が力強く私を抱きしめた。
「フルオラ、無事で良かった……!」
「ア、アース様……!」
突然のシチュエーションに激しく動揺し、心臓が壊れそうなほど強く鼓動する。
だって……こんなこと生まれて初めてだから。
腕の隙間から会場が見えたけど、王様始め皆さん口に手を当て顔を赤らめてらっしゃる。
特に王様は、ほっぺたが林檎みたいに赤くなっていた。
もう大丈夫なんだ、という安心感とともに、急激に恥ずかしさで胸がいっぱいになる。
でも……絞り出すような声しか出ない。
「ア、アース様……皆さんが見てらっしゃいます……」
「構わんさ。君が無事ならそれでいい。私の大事なフルオラ……本当によかった……」
呟くように言うと、アース様はより強く私を抱く。
細くも逞しい腕に抱かれながら、私はいつまでも幸せを感じていた。
「遅くなってすまない。怪我はないか?」
「は、はい、私は大丈夫です。助かりました」
アース様はペルビアから視線を離さずに言う。
見たことないくらい厳しい表情に、こんなときなのにドキリとしてしまった。
「君はペルビアだな。フルオラを襲うとはいい度胸だ。自分がどんな末路を迎えるか……覚悟しているだろうな」
「ち、地底辺境伯……」
ペルビアは恐ろしい鬼でも見たかのような、恐怖の表情だ。
普段のアース様は落ち着いてらっしゃるけど、このときばかりはわずかに震える背中から相当の怒りが伝わった。
アース様は守るように私を優しく抱きながら、腰に下げた剣を引き抜く。
月明かりを反射して、眩しいほどに刀身がギラリと輝いた。
「以前"錬金博覧会”でも言ったと思うが、フルオラを侮辱したり傷つけようとする者は誰であろうと許さない。……死をもって償いたまえ」
「あ……い、いや……あたくしはただ……」
アース様にすごまれると、ペルビアはぱたり……と気を失ってしまった。
ピクリとも動かない様子と怯えきった表情から、本当に怖かったのだと思う。
すかさず、アース様は会場に向かって叫ぶ。
「衛兵、来てくれ! 侵入者だ!」
「「グラウンド卿! どうされましたか!」」
アース様が呼びかけるとすぐに衛兵が駆けつけてくれ、ペルビアとナルヒン様は瞬く間に縄で縛られてしまった。
騒ぎを聞きつけ、会場から貴族や王様が顔を出す。
「グラウンド卿、何があったのじゃ!?」
「賊の侵入です。ですが、ご心配なく。もうすでに対処しました」
「そうか、さすがグラウンド卿じゃの。じゃが、侵入を許すとは警備をより強固にせねばならんな。……衛兵よ、他に侵入者がいないか宮殿中を調べるんじゃ!」
「「はっ!」」
王様が呼びかけると、何人もの衛兵たちが宮殿中に走る。
たぶん侵入者はあの二人だけだろうけど、他にもいたら大変だものね。
ペルビアとナルヒン様が衛兵に連れ去られるのを見届けると、アース様が力強く私を抱きしめた。
「フルオラ、無事で良かった……!」
「ア、アース様……!」
突然のシチュエーションに激しく動揺し、心臓が壊れそうなほど強く鼓動する。
だって……こんなこと生まれて初めてだから。
腕の隙間から会場が見えたけど、王様始め皆さん口に手を当て顔を赤らめてらっしゃる。
特に王様は、ほっぺたが林檎みたいに赤くなっていた。
もう大丈夫なんだ、という安心感とともに、急激に恥ずかしさで胸がいっぱいになる。
でも……絞り出すような声しか出ない。
「ア、アース様……皆さんが見てらっしゃいます……」
「構わんさ。君が無事ならそれでいい。私の大事なフルオラ……本当によかった……」
呟くように言うと、アース様はより強く私を抱く。
細くも逞しい腕に抱かれながら、私はいつまでも幸せを感じていた。