婚約破棄された錬金術師ですが、暗黒地底に放り出されたら冷徹な辺境伯様との楽しい毎日が始まりました
第38話:”大穴”を塞ぐ魔道具《封印門》
準備が終わり、私とアース様は"大穴"にやってきた。
以前調査に来たときと変わりない景色だけど、今から始める錬成を思うと、どこか硬い雰囲気が感じられた。
でも……大丈夫、心配は要らない。
周囲にはお屋敷のみんなもいる。
クリステンさんにワーキンさん、ルーブさんにルオちゃん……。
みんな、"大穴"を塞ぐ瞬間に立ち会ってくれた。
気持ちを整え、私が選んだ素材を見る。
<天空水晶>
ランク:S
属性:聖
能力:天空に漂う純度の高い魔力が凝縮されてできた結晶体。聖なる魔力そのものと言っていい。
<魔封石>
ランク:S
属性:聖
能力:悪しき存在を封印する力を持った鉱石。非常に堅牢な分、加工が難しい。
<古代龍の光玉>
ランク:S
属性:聖
能力:古の時代から生きる龍の体内で生成された光玉。とても強力な聖なる魔力が宿る。
<古代樹ユグドラシルの枝>
ランク:S
属性:聖
能力:数千年前からこの世に息づくユグドラシルの枝。単なる枝でも膨大な力を持つ。
それぞれ錬成陣の所定の位置に置く。
重い素材もあったので、ルオちゃんやワーキンさん、アース様にも運ぶのを手伝っていただいた。
あとは錬成陣に魔力を込めるだけ。
深呼吸して気持ちを落ち着かせるも、やっぱり緊張する自分がいた。
これだけ大型の魔導具を錬成するのは私も初めてだ。
うまくできるかな……。
顔が強ばっていたら、そっと肩に手を置かれた。
「大丈夫だ、フルオラ。君なら絶対にできるさ。この私が保証する」
その言葉を聞くだけで、自信が戻るのを感じる。
何よりも力強くて、私の心に迷いを吹き飛ばすような明るい光が差し込んだ。
「……アース様……ありがとうございます。なんだか元気が出ました」
「私だけじゃない。みな、君の力を信じているんだ。……フルオラならできる」
周りを見ると、みんな笑顔で私を見てくれていた。
……そうだ、何も心配はいらないんだ。
私は一人じゃないのだから。
気持ちを引き締め、錬成陣に向き直る。
「では、始めます……【錬成】!」
魔力を錬成陣に込めると、青白い光が煌々と輝いた。
錬成反応自体は問題ない。
……だけど、素材の分解と再構築がなかなか始まらない。
いつもならすぐ始まるのに……。
傍らのアース様も、心配そうな顔で話された。
「なんだか様子がおかしいな」
「ちょっと錬成陣を確かめてみます」
魔力を込めながらも、急いで錬成陣の理論を確認する。
細かいところまでチェックしたけど、間違いは見つからなかった。
じゃあなんで……。
必死に思考を巡らせた結果、原因がわかった。
「原因がわかりました。きっと……私の魔力量が足りないせいだと思います」
「君の魔力量が……?」
「はい、錬成する魔導具が大きく、普段より大量の魔力を使わなければなりません。ですが、大丈夫です。必ず最後まで錬成しますので……」
さらに一層強く魔力を込めるも、素材たちには変化が起こらない。
一生懸命魔力を注ぐのだけど、思ったより消費量が大きくて徐々に疲労が滲んできた。
額が汗ばむのを感じる。
――頑張らないと……! ここで止めては失敗してしまう……!
そう思ったとき……アース様が私の隣に立った。
「フルオラ、私の魔力を使ってくれ。魔法は苦手だが、魔力の量だけはそこそこあるんだ」
「ア、アース様……? で、ですが、かなりたくさんの魔力を使ってしまいます。そこまでしていただくわけには……」
「いや、使ってほしい。君は……一人じゃないんだから」
その言葉を聞いて、忘れかけていた大事な事実を思い出した。
――私は……一人じゃないんだ。
周りには大切な人たちがいる。
アース様と手を握ると、身体中に魔力がみなぎった。
今までにないくらい、全力で錬成陣に魔力を込める。
アース様と一緒なら何でもできる。
そう、強く思えた。
――お願い……! うまく錬成できて……! 暗黒地底の平和のために、そしてアース様のために……!
錬成陣がきらめき、洞窟の中が昼間のように照らされる。
素材たちは瞬く間に巨大な門に姿を変え、"大穴"を完全に塞いだ。
《封印門》
ランク:S+
属性:聖
能力:悪しき者の往来を遮断する門。何人足りとも破壊することはできない。
で、できた……。
"大穴"を塞げた……。
充実感よりまず感じたのは安心だった。
大役を終えられてホッとする中、アース様が褒めてくださった。
「フルオラ、やっぱり君は最高の錬金術師だ! 本当にありがとう!」
「ア、アース様……!」
いきなりグッと力強く抱きしめられ、心臓がドキリと跳ね上がる。
あわあわしていると、クリステンさんたちの歓声が聞こえた。
「やりましたね、フルオラ様! お見事でございます!」
『お前なら絶対にできると思っていたぜ!』
『さすがです、フルオラさん。あなたに不可能はありませんね』
『ママ……天晴れ……。壮大な……錬金術……』
クリステンさんもワーキンさんもルーブさんもルオちゃんも、バンザーイ! と両手を挙げて喜んでくれた。
みんなの笑顔を見ていると、私も嬉しくなる。
――頑張ってよかった……。これでアース様も地底に縛られ続けることはなくなるはず……。
洞窟が喜びにあふれる中、アース様が私を離して静かに言った。
至極……真剣な顔で。
「フルオラ、大事な話がある。……私の部屋に来てくれないか?」
それほど大きな声ではないのに、不思議と私の耳によく聞こえた言葉だった。
以前調査に来たときと変わりない景色だけど、今から始める錬成を思うと、どこか硬い雰囲気が感じられた。
でも……大丈夫、心配は要らない。
周囲にはお屋敷のみんなもいる。
クリステンさんにワーキンさん、ルーブさんにルオちゃん……。
みんな、"大穴"を塞ぐ瞬間に立ち会ってくれた。
気持ちを整え、私が選んだ素材を見る。
<天空水晶>
ランク:S
属性:聖
能力:天空に漂う純度の高い魔力が凝縮されてできた結晶体。聖なる魔力そのものと言っていい。
<魔封石>
ランク:S
属性:聖
能力:悪しき存在を封印する力を持った鉱石。非常に堅牢な分、加工が難しい。
<古代龍の光玉>
ランク:S
属性:聖
能力:古の時代から生きる龍の体内で生成された光玉。とても強力な聖なる魔力が宿る。
<古代樹ユグドラシルの枝>
ランク:S
属性:聖
能力:数千年前からこの世に息づくユグドラシルの枝。単なる枝でも膨大な力を持つ。
それぞれ錬成陣の所定の位置に置く。
重い素材もあったので、ルオちゃんやワーキンさん、アース様にも運ぶのを手伝っていただいた。
あとは錬成陣に魔力を込めるだけ。
深呼吸して気持ちを落ち着かせるも、やっぱり緊張する自分がいた。
これだけ大型の魔導具を錬成するのは私も初めてだ。
うまくできるかな……。
顔が強ばっていたら、そっと肩に手を置かれた。
「大丈夫だ、フルオラ。君なら絶対にできるさ。この私が保証する」
その言葉を聞くだけで、自信が戻るのを感じる。
何よりも力強くて、私の心に迷いを吹き飛ばすような明るい光が差し込んだ。
「……アース様……ありがとうございます。なんだか元気が出ました」
「私だけじゃない。みな、君の力を信じているんだ。……フルオラならできる」
周りを見ると、みんな笑顔で私を見てくれていた。
……そうだ、何も心配はいらないんだ。
私は一人じゃないのだから。
気持ちを引き締め、錬成陣に向き直る。
「では、始めます……【錬成】!」
魔力を錬成陣に込めると、青白い光が煌々と輝いた。
錬成反応自体は問題ない。
……だけど、素材の分解と再構築がなかなか始まらない。
いつもならすぐ始まるのに……。
傍らのアース様も、心配そうな顔で話された。
「なんだか様子がおかしいな」
「ちょっと錬成陣を確かめてみます」
魔力を込めながらも、急いで錬成陣の理論を確認する。
細かいところまでチェックしたけど、間違いは見つからなかった。
じゃあなんで……。
必死に思考を巡らせた結果、原因がわかった。
「原因がわかりました。きっと……私の魔力量が足りないせいだと思います」
「君の魔力量が……?」
「はい、錬成する魔導具が大きく、普段より大量の魔力を使わなければなりません。ですが、大丈夫です。必ず最後まで錬成しますので……」
さらに一層強く魔力を込めるも、素材たちには変化が起こらない。
一生懸命魔力を注ぐのだけど、思ったより消費量が大きくて徐々に疲労が滲んできた。
額が汗ばむのを感じる。
――頑張らないと……! ここで止めては失敗してしまう……!
そう思ったとき……アース様が私の隣に立った。
「フルオラ、私の魔力を使ってくれ。魔法は苦手だが、魔力の量だけはそこそこあるんだ」
「ア、アース様……? で、ですが、かなりたくさんの魔力を使ってしまいます。そこまでしていただくわけには……」
「いや、使ってほしい。君は……一人じゃないんだから」
その言葉を聞いて、忘れかけていた大事な事実を思い出した。
――私は……一人じゃないんだ。
周りには大切な人たちがいる。
アース様と手を握ると、身体中に魔力がみなぎった。
今までにないくらい、全力で錬成陣に魔力を込める。
アース様と一緒なら何でもできる。
そう、強く思えた。
――お願い……! うまく錬成できて……! 暗黒地底の平和のために、そしてアース様のために……!
錬成陣がきらめき、洞窟の中が昼間のように照らされる。
素材たちは瞬く間に巨大な門に姿を変え、"大穴"を完全に塞いだ。
《封印門》
ランク:S+
属性:聖
能力:悪しき者の往来を遮断する門。何人足りとも破壊することはできない。
で、できた……。
"大穴"を塞げた……。
充実感よりまず感じたのは安心だった。
大役を終えられてホッとする中、アース様が褒めてくださった。
「フルオラ、やっぱり君は最高の錬金術師だ! 本当にありがとう!」
「ア、アース様……!」
いきなりグッと力強く抱きしめられ、心臓がドキリと跳ね上がる。
あわあわしていると、クリステンさんたちの歓声が聞こえた。
「やりましたね、フルオラ様! お見事でございます!」
『お前なら絶対にできると思っていたぜ!』
『さすがです、フルオラさん。あなたに不可能はありませんね』
『ママ……天晴れ……。壮大な……錬金術……』
クリステンさんもワーキンさんもルーブさんもルオちゃんも、バンザーイ! と両手を挙げて喜んでくれた。
みんなの笑顔を見ていると、私も嬉しくなる。
――頑張ってよかった……。これでアース様も地底に縛られ続けることはなくなるはず……。
洞窟が喜びにあふれる中、アース様が私を離して静かに言った。
至極……真剣な顔で。
「フルオラ、大事な話がある。……私の部屋に来てくれないか?」
それほど大きな声ではないのに、不思議と私の耳によく聞こえた言葉だった。