(総愛され予定の)悪役令嬢は、私利私欲で魔法界滅亡を救いたい!
 パッと目を開けたその時、目の前が、真っ暗に思えた。やがて慣れて来た薄暗い視界の中には、洞窟の中にある湖らしき場所。

 私は縁に位置して居て、浅い水の中から身体を起こそうとした。

「っ……ここは……?」

 懸命に見回しても、誰もいない。エルネストと一緒に居て……急流に誤って落ちてしまい、私は洞窟の奥の方へと流されてしまったらしい。

 微かに何処かから入り込む光を頼りに手探りで水に濡れない場所見つけ、その時に私は何かが手に当たったと感じた。

 それは、洞窟に自然にあった石ではなく、人為的に作られた正方形の箱のようだった。

 これが何か良くわからないけど、とにかく今は水に濡れた身体が寒い。それをぎゅっと握りしめたまま、私は意識を手放した。

 次に瞼を開けた時、すぐそこにあるエルネストの顔が、私を覗き込んで居た。彼の背後には、光り輝く夜空が見える。

 それで、私は自分たちが、あの洞窟の中に居ないということを知った。

「……エルネスト様っ……っ」

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