(総愛され予定の)悪役令嬢は、私利私欲で魔法界滅亡を救いたい!
 感極まって、涙がじわっとこぼれそうになる。自分の全身もびしょぬれになっているエルネストが、私のことを探して、あんな場所にまで助けに来てくれたに違いない。

「良かった……気が付いたのか」

 心底安心した様子で、エルネストは呟いたので、私は本当にこの人は優しいんだと思った。

 これまでにエルネストに対し、どれだけ嫌な思いをさせて、どれだけ恥をかかせたかを思うと、ロゼッタは彼にせいせいするとばかりに見捨てられていても仕方ないと思う。

 転生した私がこうして記憶を取り戻して、彼への態度が改善出来たのなんて、つい最近のことだもの。

 ここは洞窟の近くにある砂浜で、薪を集めて焚き火を焚いて、寒さで震えていた私を温めようとしてくれたみたいだった。

「……あ。フローラは……?」

 ゆっくりと体を起こした私は、洞窟内で行方不明になっていたフローラのことを思い出した。

 私たちは行方知れずになった彼女を探すつもりであの洞窟に入ったはずなのに、見事にミイラ取りがミイラになってしまった。

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