(総愛され予定の)悪役令嬢は、私利私欲で魔法界滅亡を救いたい!
「……お前、それわざとだろ? 生意気を言うのも、いい加減にしろよ」

 私は聞こえない振りをして、アクィラの先輩たちの方向へ向かった。

 あー。はいはい。そちらがわかっていることも、わかってますよーっだ。その時に、背後でブンッと鋭い音がして、私が振り向くと、黒い影が大きな刃を受け止めていた。

 えっ……? 何。イエルクの黒魔法……?

「申し訳ありません。僕が聞き逃したのだと思いますが……ディリンジャー先輩に何かしら非があったとしても、魔法界では誰かを身体的に害することは、法律で禁じられています。もしかしたら、グーフォの授業が進んでいなくて、知らないのかも……しれないですが」

 そんな訳はないし、兄は高等部の最終学年だ。

「お前……負けたら、謝れよ」

 サザールは怒った声を出したけれど、試合再開の声がした。さっきの攻撃は、イエルクがあっという間に消してしまったから、見間違いだと思った人も多いのか、客席は怪訝な様子でざわざわとしていた。

「もちろんです。そちらも、同じようにお願いします」

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