(総愛され予定の)悪役令嬢は、私利私欲で魔法界滅亡を救いたい!
 グーフォが全員戦闘不能になったことにより、アクィラは勝利。乙女ゲームの中では攻略対象者の格好良いスチル何枚かで終わるイベントなのに、すっごく苦労した。

 ぐったりしてしまった私はすぐに控え室に戻ろうとしたんだけど、イエルクが私の腕を取った。

「……イエルク?」

「ディリンジャー先輩。忘れていますよ」

 イエルクはまだエルネストの放った氷によって、動きを止められていたサザールに近付いた。

「謝ってください。僕らが勝ったんですから」

 イエルクは先ほどの約束で、サザールが放った暴言を私に謝罪させようとしたらしい。

 サザールは目を逸らし顔を背けて、素知らぬ顔だ。あんな拘束力もない口約束など、守る価値もないと思って居るのだろう。

「……イエルク。大丈夫よ。帰りましょう。オスカー先輩も心配だし……」

「おい。何の話だ?」

 審判との話が終わったエルネストは、まだここに居る私たちを不思議に思い、近付いて来たようだ。

「会長。この人はディリンジャー先輩のお兄さんだそうです。先ほどの風の刃も、敢えて狙いました。それに、先輩に許し難い暴言も!」

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