(総愛され予定の)悪役令嬢は、私利私欲で魔法界滅亡を救いたい!
 あんなに圧を掛けられて、普通の子が逆らえるはずもないんだから、さっさと庇いなさいよ。

「……父上。お聞き苦しいことを、申し訳ありません」

 サザールは形ばかり謝罪し私を睨めば、イライラとした態度で飲み物の入ったコップを音をさせて乱暴に置いた。

 何も悪くない妹がいつも彼に怯えているからと、これはとんでもなくみっともなくないかしら。

 ……まあ、良いわ。私は私で、そんなサザールへと追い打ちを掛けよう。

「お父様。私は本当に……そう思ったのですわ。お兄様の新しい髪型は、素敵だったので」

 私が父に向けて、うるうるとした目で訴えると、母ステラもなぜか加勢してくれた。

「サザール。本当にロゼッタが言った通りに似合っています……これまで鬱陶しいくらいにだらだらと長い髪でしたけど、貴方も最高学年の三回生になるから、切ったのね。良く似合うわ。そうね。ロゼッタも男性の褒め方が上手くなったこと……エルネスト様も、きっとお喜びでしょう」

 いいえ。お母さま。ロゼッタはエルネストには迫りすぎて、とても嫌われていますので、少々褒めたところで喜ばれることはないかと思います。

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