(総愛され予定の)悪役令嬢は、私利私欲で魔法界滅亡を救いたい!
 ……なんて、ここで言っても何の良いこともないわよね。

 私は何食わぬ顔でにっこりと微笑み、両手を組んで隣に座る母を見た。

「お母様も、そう思いますわよね。私も兄上は、髪は短い方が似合うと、ずっと思っていたのですわ!」

「失礼……急用があるので、先に部屋に戻ります」

 兄サザールは食事途中にも関わらず白々しい言い訳をしつつ立ち上がり、指を組んだままの私をじろりと睨んだ。

 別にそんなの、怖くないよーだ。

 嫌味な上司と三次会まで付き合った地獄の数時間を思い出せば、世間の荒波も知らない学生のひと睨みなんて、そよ風浴びました程度だけど?

「おい……礼儀がなってないぞ。サザール」

 お父様にも怒られて……これでは、何も言い返せないわよね。

 私は黙って立ち去るサザールの後ろ姿を見つつ、これからもロゼッタとして生きて行くのなら、この良くない家族の問題もどうにかしなければと大きく溜め息をつきつつ思った。

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