(総愛され予定の)悪役令嬢は、私利私欲で魔法界滅亡を救いたい!
 今、目にした光景が信じられなくて、私は何度か目を瞬かせ、口をぽかんと開けたまま呆然としてしまった。

 何々……えっ……嘘でしょう。待って。

 今っ……今って、大事な主役二人の二人の出会いの、乙女ゲーム開幕になる場面だったよね……?

 入学式の後、桜並木を歩いていたら、上から落ちて来た虫に驚いたフローラが、偶然通りがかったエルネストに白魔法の中のひとつ電魔法を使って誤って攻撃してしまう。

 もちろん、驚きからの行為で故意ではないから慌てて彼へ謝罪はするものの、一年生から常に監督生を務め、今では生徒会長のエルネストに、フローラは要注意人物としてここで目を付けられてしまうことになる……はず、だった。

 のに、先程は何もなかった。

 本当に衝撃的過ぎて呆然として私が見ている間に、ぼとんと緑色の毛虫が木から道に落ちて、そして、落ちてしまった木の下へとゆっくりとした移動速度で必死で這っていた。

 ……遅いよー! ここ一番の大事な出番だったのに、何してたの?

 私がゲームプレイ中に見ていた通りの展開にならなかった。

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