(総愛され予定の)悪役令嬢は、私利私欲で魔法界滅亡を救いたい!
 短く切った茶色の髪は、セットしているのかツンツンに立っていてヤンチャな雰囲気、端正に整っている顔の中にある黄色い目は、親しみやすく可愛らしいタレ目。

 オスカーは乙女ゲームでの好感度を上げれば、身体中がとろける砂糖を吐くようなあっまーい台詞を、飽きるくらいに吐いてくれることになる。

だから、今は自分を見て複雑な強張った表情を浮かべているのを見ると、落差に悲しくなってしまう。

 ゲーム画面では、あんなにも優しかったのに……まぁ、あれは、フローラ相手で、ロゼッタに向けてではなかったけど。

「オスカー先輩。あのっ……」

 凍りついている彼の様子に怖気付きつつも、勇気を出して話しかければ、オスカーは目を瞑ってバッと胸の前で両手を合わせた。

「ロゼッタちゃん。ごめんね。君の話はもう二度と聞くなって、エルネストに言われてて……本当にごめん!!」

 女の子には優しい癖に、とある事情があって女の子には触れられないオスカーは、すまなさそうな顔をして走って去って行った。

 ……ええ。嘘でしょう。ここ貴方の教室の前だよ。授業が始まるのに、どこ行くの。

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