(総愛され予定の)悪役令嬢は、私利私欲で魔法界滅亡を救いたい!
 ここまで来て、急に『良かったら、私と仲良くなって欲しいの』という台詞が、ひどく恥ずかしいものに思えた。

 確かにイエルクには、そうなって欲しいんだけど……仲良くなって欲しいって、何なの?

 誰かと仲が良いって、別に宣言してから仲良くなるものでもないわよね? 話しているうちになんとなく親しくなって、だんだんと仲良くなってという過程が大事だよね?

「……はい」

 話の途中で言葉を止めてしまったために、イエルクは不思議そうに首を傾げて、私の発言を待っていた。

 良い子なのだ……良い子だけど、ここで何か変なこと言えば、またエルネストやオスカーみたいに嫌われちゃう……嫌われたくない。

「私……イエルクくんに、勉強を教えてもらいたくて!」

「……え?」

 イエルクのぽかんとした顔を見てしまったと後悔したけど、後の祭りだった。

 仲良くして欲しいの代わりに何を彼に頼もうか迷いに迷った挙句、入学したばかりの新入生イエルクに、勉強を教えて欲しいとお願いする、よく分からない上級生になってしまった。

 なんなの。もう……恥ずかしい。

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