(総愛され予定の)悪役令嬢は、私利私欲で魔法界滅亡を救いたい!
 ……私の悪評を何も知らないイエルクとは、順調に仲良くなっている気はするし、別に良いか……。

 恋が叶う本って、いかにも乙女ゲームだよね。だって、普通なら好感度が上がり下がりを操れるアイテムなんて、心を操っているみたいで……。

「……です。ディリンジャー先輩。聞いてますか?」

「聞いてるよ。イエルクって、本当に教え方上手いよね」

 隣の女の子たちの会話に、頭の中が完全に横道に逸れてしまっていた私が動揺を隠せず彼を褒めると、イエルクは照れくさそうに微笑んだ。

 イエルクは無表情が基本だから、こういうふとした笑顔が可愛いんだよね……ギャップ萌えという概念かしら。

 私は『恋色★魔法学園』では、一応エルネストが推しだったんだけど、これからはイエルクが一番の推しになりそう。

 だって、唯一私に優しいし……優しくない男なんて、近寄りたくもない。

 ……どんなに好みの顔でも、自分に冷たい人をずっと好きでいるとか無理……私はロゼッタは、そういう意味で凄いとは思う。

 あまり恋愛に興味なかった元喪女OLから見たって、それは時間の効率が悪すぎる。

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