(総愛され予定の)悪役令嬢は、私利私欲で魔法界滅亡を救いたい!
 確かうっすらとした記憶では双月草に関する本は、司書との関係を深め図書館ランク『S』にならないと、見つからず読めなかったはずだけど、今なら私は自由に動けるし『S』や『SS 』の本だって普通に読めちゃうはずだよ!

「……っわ」

 双月草についての本をどこに探しに行くべきか、きょろきょろと周囲を見回していたら、イエルクの顔に私の髪が当たってしまったようだ。

「ごめん! ごめん。大丈夫だった? ごめんね」

 こんなにも長い髪を扱うなんて、生まれ変わった今が初めてだから……イエルクは頬を押さえていたけど、大丈夫というように微笑んだ。

「大丈夫です……ディリンジャー先輩の髪って、さらさらしてるし、真っ直ぐで綺麗ですよね。僕くせっ毛だから、羨ましくて憧れます」

 イエルクの髪は天然でそうらしいんだけど、くるくると巻いている黒い巻き毛だ。

 まるで彫像のように見える美形なのに、可愛らしさを感じるのは、その髪の印象の効果も大きいかもしれない。

 髪をぶつけられたのにまんざらでもない様子のイエルクを見て、これは、攻略対象者の攻略が私にもいけてしまうのでは? と、正直思ってしまっていた。
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