(総愛され予定の)悪役令嬢は、私利私欲で魔法界滅亡を救いたい!
 オスカーは思わせぶりなことを、にこにこして言うけど、今好感度が全くない私にだから、彼にとってはこれは何の気持ちもない挨拶程度なのよ。

 多分、自分から興味が逸れたからエルネストから私と話しても良いって許可されたから、何だか嬉しそうなのも、何の意味もないのよ。

 ……はーっ……女の敵。

「オスカー先輩って、悪気ないのが、また罪深いですね」

 じろっと睨んだ私に、オスカーは戸惑っていた。

「えっ……なんで、可愛いって言われたら、嬉しくない?」

「いえ……嬉しいですよ。ありがとうございます」

 私が生徒会に入った目的は、フローラとイエルクと仲良くなることだから、友人エルネスト次第で態度が変わる調子良いオスカーと、話していてもね。

 今日は挨拶のみのはずだったから、そろそろ帰ろうと私は鞄を持って立ち上がった。

 けど、靴が床を滑って転けそうになったのを、一番近くに居たオスカーではなく……隣に居たイエルクが、咄嗟に支えてくれた。

「っ……ディリンジャー先輩、大丈夫ですか?」

「イエルクくん。ありがとう……大丈夫よ。私の不注意だから」

< 83 / 158 >

この作品をシェア

pagetop