(総愛され予定の)悪役令嬢は、私利私欲で魔法界滅亡を救いたい!
 その気持ち、わかるよ。なんで、まったく具が入っていないのに、こんなにも生臭いんだろうね……?

「そんな訳ないよ! ……日々、不満でいっぱいだよ! なんで、こんなにパンが硬いの? とか、意味わからないもん!」

「そうですね。グーフォのパンは、もっと柔らかくて、美味しかったです」

 美味しそうなパンを想像して、私たち二人は、はあっとため息を同時についた。

「柔らかいふわふわのパン食べたい……こんな、カリカリでカラカラな硬いパン、嫌……」

「わかります……美味しくないですよね」

「そういえば、確か……遠くから、物を引き寄せる魔法ってなかったっけ? それが出来たら、使えればなあ……」

 私がそう言った時、イエルクはサッと顔色が変わったので『しまった』とは思った。

 ……遠くから、物を引き寄せる魔法……それって、彼の使う黒魔法の上位魔法である闇魔法だった。

 けど、今の段階では、彼はまだ黒魔法使いで、闇魔法使いではないんだった……しまった。

 忘れてた。養い親の事もあって、それは隠しているんだよねえぇぇえ……なんで、こんなに私って記憶力が残念なの?

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