(総愛され予定の)悪役令嬢は、私利私欲で魔法界滅亡を救いたい!
「そっ……そういえば、フローラちゃん……だっけ? イエルクくんと同じ年の子、可愛かったよね~」

 強ばった表情のイエルクを前に、私はかなり苦しいけど、無理矢理力業で話題を変えた。

 というか、フローラとイエルクが上手く行って、乙女ゲーム通りにくっついたら、私があくせくしなくて良いのにな。

「そうですか……? すみません。あまり、隣を見ていなくて」

 イエルクって、本当に心を開いたヒロイン以外無関心なんだよね……そういうキャラ設定だし。

「なんだか、生きているお人形さんみたいだったよ。可愛かった~」

 そして、私の言葉からフローラを、『へえ。確かに可愛いし……気になる』と、なって欲しい! 魔法界の平和のために!

 美食ツアー達成したい、私の野望のためにも!

「生きている人形というなら、ディリンジャー先輩もそうですよね。可愛いです」

 イエルクは特に必要ないので、思いもしないお世辞は言わない。

 だから、私はその時、この人普通にそう思って居る……とわかって、すごく恥ずかしくなった。

 ……え。今、自然にさらっと可愛いって、言ったね?

 ……ううん。悪役令嬢だけど、ロゼッタは事実可愛いのよ。

 可愛いけど、振る舞いと性格に、非常に難があっただけで……っていうか、エルネストに迫っては残念だったあの姿を、入学したばかりのイエルクは何も知らないんだ……。

「あ……ありがとう……ございます」

 さっき思った通り、イエルクは何の気なしに言っただけらしく、私の尻すぼみなお礼が不思議だったのか、不思議そうに首を傾げていた。

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