王子様の恋人になるお仕事はじめました
ゆったりとしたリズムの音楽が終わり、明るい曲調の音楽へと変わった。
「リルエ。ダンスの成果を披露しよう」
「いいんでしょうか? アルオニア様に憧れている女性たちの顔が怖いです」
「だったら最高のダンスを披露して、僕のパートナーに相応しいのはリルエだと知らしめないとね。そのために、ヴェサリスとダンス特訓をしたんだろう?」
ウインクをした王子に、やはりあのダンス特訓は卒業パーティーのためだったのだと笑ってしまう。
わたしは王子の肩に手を置いた。音楽に合わせてステップを踏んでいく。
王子と踊るのはとても楽しい。わたしは自然と笑みをこぼし、そんなわたしを王子は優しく見つめた。
生徒らの視線が驚きから羨望へと変わっていく。
会場の端に、ガーネットとシェリアの友人らの姿があった。ヴェサリスから、シェリアは自宅謹慎していると聞いている。
音楽が徐々に小さくなり、止んだ。ダンスを終えたわたしたちに、生徒たちの歓声と拍手が鳴り響く。
「リルエ。行こう!」
「どこに?」
「会場を抜け出す。告白はリルエに先を越されたからね。今度は僕から言いたい」
なにを言うことがあるのだろう?
首を傾げながらも、手を引かれるがままについていく。
学校の裏庭にある木の下に着くと、王子はわたしを抱きしめた。
「恋人役の契約は、今日で終わりだ」
「そうですね。では、この抱擁は恋人役としてですか?」
「今日はね。でも、明日からは違う」
王子は体を離すと、わたしの右手を取って、指先にキスを落とした。
「わっ!」
「もう、離さないよ。離したくない。君が好きだ。明日からは仕事じゃなくて、本当の恋人になってもらえる?」
わたしの指に唇を当てたまま、上目遣いで聞いてくる王子。
わたしは顔を真っ赤にして、はにかんだ。
「はい。仕事じゃなくて、本当の恋人になりたいです」
恋人役の仕事を終え、わたしたちは本物の恋人になった。
夢を見ても無駄だ。幸せになりたいだなんて思っても虚しいだけ。そう思っていた昔の自分に言ってあげたい。
——わたしは今、幸せの中にいるよ。子供の頃に夢見ていた白馬の王子様より、もっと素敵な男性に出会えたよ。
☆.。.:*・°Fin.。.:*・°☆.
「リルエ。ダンスの成果を披露しよう」
「いいんでしょうか? アルオニア様に憧れている女性たちの顔が怖いです」
「だったら最高のダンスを披露して、僕のパートナーに相応しいのはリルエだと知らしめないとね。そのために、ヴェサリスとダンス特訓をしたんだろう?」
ウインクをした王子に、やはりあのダンス特訓は卒業パーティーのためだったのだと笑ってしまう。
わたしは王子の肩に手を置いた。音楽に合わせてステップを踏んでいく。
王子と踊るのはとても楽しい。わたしは自然と笑みをこぼし、そんなわたしを王子は優しく見つめた。
生徒らの視線が驚きから羨望へと変わっていく。
会場の端に、ガーネットとシェリアの友人らの姿があった。ヴェサリスから、シェリアは自宅謹慎していると聞いている。
音楽が徐々に小さくなり、止んだ。ダンスを終えたわたしたちに、生徒たちの歓声と拍手が鳴り響く。
「リルエ。行こう!」
「どこに?」
「会場を抜け出す。告白はリルエに先を越されたからね。今度は僕から言いたい」
なにを言うことがあるのだろう?
首を傾げながらも、手を引かれるがままについていく。
学校の裏庭にある木の下に着くと、王子はわたしを抱きしめた。
「恋人役の契約は、今日で終わりだ」
「そうですね。では、この抱擁は恋人役としてですか?」
「今日はね。でも、明日からは違う」
王子は体を離すと、わたしの右手を取って、指先にキスを落とした。
「わっ!」
「もう、離さないよ。離したくない。君が好きだ。明日からは仕事じゃなくて、本当の恋人になってもらえる?」
わたしの指に唇を当てたまま、上目遣いで聞いてくる王子。
わたしは顔を真っ赤にして、はにかんだ。
「はい。仕事じゃなくて、本当の恋人になりたいです」
恋人役の仕事を終え、わたしたちは本物の恋人になった。
夢を見ても無駄だ。幸せになりたいだなんて思っても虚しいだけ。そう思っていた昔の自分に言ってあげたい。
——わたしは今、幸せの中にいるよ。子供の頃に夢見ていた白馬の王子様より、もっと素敵な男性に出会えたよ。
☆.。.:*・°Fin.。.:*・°☆.