王子様の恋人になるお仕事はじめました

おまけ①リルエとガラスの靴

 今夜はお城の舞踏会。
 継母と姉二人にいじめられているリルエは、舞踏会に連れていってもらえません。

 泣いているリルエの前に、魔法使いオルランジェが現れました。
 オルランジェが魔法の杖を振ると、リルエの継ぎはぎだらけの粗末な服が、美しく輝く青色のドレスへと変わりました。さらにオルランジェはカボチャを馬車に、ネズミを馬に、トカゲを従者へと変えました。
 オルランジェはガラスの靴をリルエに履かせると、こう言いました。

「十二時で魔法が解けてしまう。お城の鐘が十二時を鳴らす前に、戻ってくるのですよ。いいですね?」
「はい。素敵な魔法をありがとうございます!」

 リルエは喜んでお城の舞踏会へと出かけました。


 ✢✢✢


 贅を極めた舞踏会の会場に、リルエはうっとりと酔いしれます。
 女性たちに囲まれている男性がいます。この国の王子、マッコンエルです。
 マッコンエル王子は少々軽薄なところがあり、気に入った女性を口説かずにはいられません。
 遠巻きに王子を眺めるリルエが目に入った途端、マッコンエル王子の足は彼女へと向かって歩きだしました。

「美しいお姫様。俺と踊っていただけませんか?」
「お姫様ではありません。違います」
「美しい女性は皆、お姫様です。さあ、俺の手をとって」

 王子様の手を拒めるはずがありません。
 光り輝くシャンデリアの下での、おしゃべり上手な王子様とのダンス。リルエは楽しくて、笑みをこぼしました。

「あなたの笑顔はなんて魅力的なんだ。恋に落ちるとは、このことを言うのだろう」
「誰にでも、そんなことをおっしゃるのですか?」
「まさか。愛する女性の前で嘘をつくことなどできない。あなたといると俺は、世界一誠実な男にならざるをえない」
「口が上手ですね」
「本当のことしか話していない」

 曲が終わり、マッコンエル王子が「別室で休みませんか?」そう、言葉に出そうとした、そのとき──。
 
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