学園トップのワルい王子様にくちびる奪われちゃいました!?
 はいどうぞ、と返してもらえるものでもないことはわかっている。

 でも好きになったひとと、気持ちを確かめ合って、仲良くなって、ドキドキしながらするものだと憧れていたのに。

 まさかの『奪われちゃった』である。

 半ベソをかく私の顎を江本先輩は優しく持ち上げると、悪びれる様子もなく、もう一度キスをしてきた。

 しかもさっきよりもえ長く口づけて、ちゅっと唇を啄んで離れていく。

 「返した」

 にこりと笑う顔はいたずらっ子みたいだった。

 ショックを受ける私をも楽しんでいるかのように、あっさりセカンドキスまで奪うとは。

 しかもなんかちょっと、大人みたいなキスだった。

 ファーストキスがもう一度、唇を重ねることでなかったことになるわけもない。

 もう、何も言えなくなってしまう。
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