名前
 

「辛辣じゃの」
「じゃあ、志摩が私の名前を入れてよ。桜子って」
「絶対嫌じゃ。クソダサすぎて死ぬ」
「むかつく」

 思い切り背中を叩くと、志摩は肩を揺らして笑った。
 人の気も知らないで、いつもこうやってからかって。本当にむかつく。

「ね、その刺青。背中まで入ってるの?」
「んー? 気になるんか」
「気になる。見せてよ」
「嫌じゃ。お嬢には見せん」
「ほかの女の子には見せるのに」

 恨みをこめて睨むと、志摩が愉快そうに目を細める。その余裕たっぷりの表情がまたむかつく。

「どうせ志摩は相変わらず女の子を食い散らかしてるんでしょ」
「人聞きが悪いのう。ちょーっと仲良くしとるだけじゃ」

 しらばっくれる志摩を睨む。なにが仲良くだ。

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