100の涙の物語
インターホンを押して少しすると、お姉ちゃんの声が聞こえた。
「はい。どなたですか~?」
もう10年以上、なんら変わりないお姉ちゃんの声に、私は安心感を覚えた。
「お姉ちゃ~ん。私、ユキだけど……」
インターホンに向かって私は、開けて~とふざけて泣く真似をした。
「お~。ユキ、どうしたの~?今開けるから…」
しばらくして、ガチャガチャと鍵を開く音が聞こえたかと思うと、すぐさまドアノブが回り、懐かしい笑顔をしたお姉ちゃんが、開いた扉の隙間から顔を出した。
2年ぶりに見た、お姉ちゃんの姿。
「ユキ~どうした~?とりあえず、上がりなあ」
お姉ちゃんは扉を全開すると、玄関先の靴を少し隅に追いやり、私を中へ入れた。