100の涙の物語
あれから17年。
私も年取ったよね。
もう35歳だよ。
あれ以来私は再婚もしないで、女手一つで娘を育ててきた。
育ててこれたのはあの日、リョウちゃんに会えたから。
「千鶴ーっ!学校遅れるよー!早くしなー!」
赤ちゃんは『チヅル』と名付けた。
由来は、生前リョウちゃんがつけたがっていたから。
千羽鶴は願いを叶えてくれるから縁起いいし、かわいいじゃん!
って言ってたのを今でも思い出す。
「あ~もうご飯いいや。遅刻しちゃう!」
チヅルはパンを持ち玄関に向かって走り出した。
親子って似るんだな。
最近つくづくそう思う。
チヅルは靴箱の上に飾られた、実際には見たことのない父親の写真に向かって、
「いってきます、お父さん」
と笑顔で語りかけ、玄関の扉を勢いよく開いた。