100の涙の物語
雑誌を手に持ったまま硬直した私を見ず、お姉ちゃんは話しかける。
「さっきまでクッキー作ってたのよ。うまく焼けたんだけど、食べる?」
尚も硬直し返答のない私を、お姉ちゃんは大声で呼んだ。
「聞いてる?ユキ。クッキー、食べる?」
お姉ちゃんの大声で気づいた私は、
「え?な、なに?」
と焦ったところを隠せなかった。
「だーかーらー、クッキー食べんの?」
お姉ちゃんは若干怒りを抑えられない様子で、私の顔をのぞき込んだ。
「あ、うん。食べよっかな」
私は焦っているのを隠すかのように、大きく息を吐いた。