元貧乏貴族の大公夫人、大富豪の旦那様に溺愛されながら人生を謳歌する!

◇12


「テトラちゃ〜ん、大丈夫か〜」


 ぽんぽんと布団の上から手で叩かれるが、大丈夫なわけがない。あのあと寝落ちして、朝起きたら裸の旦那様だなんて……耐えられるわけがない!!

 しかも昨日の記憶がフラッシュバックして、つい反対側にくるっと回って布団に潜った。そしてこれだ。


「……いや、無理です」

「体調は?」

「……元気です、けど、精神的に無理です……」

「はいはい、んじゃ思う存分入ってな」


 なんて言いつつまたぽんぽん叩いてきた。子供扱いか。でもそんな文句言えるほどの余裕なんてこれっぽっちもない。この恥ずかしさをなんとかしてくれ。


「今日の予定は午後からだから、まだ寝てていいぞ。まぁ寝坊助の間抜け顔をご披露(ひろう)したいのであれば、の話だけどな」

「……いじわる」

「いじわる呼ばわりするか。ならもっといじわるするけど?」


 そう言って、布団ごと抱きしめてきた。背中が密着して……肌が直接くっついて体温を感じる。マジで恥ずかしい……


「……起きます」

「よろしい。準備はゆっくりでいいぞ」


 なんて言いつつ頭を撫でて離れていった。ベッドから出たらしい。

 はぁ、とりあえず気にしない(てい)を貫かないとなぁ。また何か言われるのは嫌だ。


「……はぁ、美味しい……♡」

「フレンチトーストで機嫌直るってどうなんだ?」

「甘いは正義ですよ」

「あっそ」


 本っっっっ当にここの料理は美味しい。美味しすぎる。

 今日着せてもらったのは、すごく着心地のいい洋服。今までこんなもの着たことがないってくらいお金かかってそう。この生地とか上等でしょ。こんなのを着ることになるとは思いもしなかった。

 けど、髪はそのままおろしている。これから何かするらしいから。でもエヴァンが触ってくるし、だいぶお気に入りなんだろうなぁ。好みらしいし。でもじっと見るのはやめてほしいけど、聞かないんだよなぁ……

 まぁでも、これのおかげで贅沢(ぜいたく)させてもらってるんだから文句は言わない。むしろこっちが感謝だ。バックれなくてありがとうございます。
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