元貧乏貴族の大公夫人、大富豪の旦那様に溺愛されながら人生を横臥する!

 そして午後、このお屋敷に来訪者がいた。その連絡を使用人からもらい、エヴァンに連れられて客間にたどり着いた。

 その来訪者は、大体40代くらいの男性。ほんわか系かな? 他にも若い男性や女性もいて、なんだか荷物が多い気がする。


「初めまして、ご夫人。お会いできて光栄です」

「は、じめまして……」

「挨拶はいい、さっさと作業に取り掛かれ」

「かしこまりました」


 うわぁ、そんな言い方するのか。エヴァンと一緒にソファーに座ってるけど……ちらり、と隣に視線を向けると、むすっとしているエヴァンが見えた。

 目の前にあるローテーブルに並べられたのは、宝石や、アクセサリー。完成品ではなさそうなものもある。


「こちらは試作品です」

「流石に早かったな。ブルーダイヤモンドか」


 これは……ヘアクリップ? 白いお花がいくつも縦に並べられていて、高級感があって上品だ。そしてところどころ小さな粒になった宝石がちりばめられている。さっき言ってたブルーダイヤモンドかな。これでまとめた髪を留めるらしい。

 こっちを向いてください、失礼しますよ。そう言われて目の前を向き頭を動かさないようにした。髪をまとめられて、クリップが留まったように感じる。


「さ、ご夫人。いかがでしょう」

「す、ごい……!」


 目の前に大きな鏡が広げられた。そして後ろにも。うわぁ、すっごく綺麗(きれい)で上品。私の長い髪が綺麗(きれい)にまとまってる。

 けれど、隣に座っているエヴァンは難しい顔で私の髪を観察している。何か問題があるのかな。


「宝石をブルートパーズに変更」

「はい」

「中心の花はもう少し大きく」

「はい」


 うわぁ、仕事姿のエヴァンはいつもの姿と全然違う。だいぶギャップがあるな。普段があんなだから余計か。


「もう一つは」

「こちらに」


 と、ヘアクリップを交換された。それからもいくつか試されては変更点などを話し合い、ようやく終わりを告げた。いやぁ、仕事モードのリアムは新鮮だった。

 私はただその場にいただけだったけれど、楽しかった。素敵なアクセサリーをいくつも見る事が出来たし、仕事のお手伝いが出来たし、新鮮なエヴァンも見られた。なんだか嬉しいな。この後、完成したものをまた私の髪で試すみたいだから、その時が楽しみだ。

 ……けど。


「あの、このままでも別にいいですけど」

「さっきのでうねってるだろ。せっかくの綺麗な髪なんだから、例え外部の者と会わなくてもこれくらいはしてろ」


 今度は違うヘアクリップを付けられてしまった。エヴァンによって。髪を()かされ、まとめられてクリップを付けられた。

 いつも髪は簡単にまとめていた。農作業とかお掃除とかしてたから。でもこんなに綺麗(きれい)にまとめるなんてしたことないから慣れないな。


「今日はずっとこれにしてろ」

「……はーい」


 これに慣れろ、って事か。はい、そうします。

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