元貧乏貴族の大公夫人、大富豪の旦那様に溺愛されながら人生を横臥する!
◇13
数日後、私は部屋からとある光景を目にした。そして、急いで部屋を出てその場所に向かった。
「こんにちは」
「えっおっ奥様っ!?」
「どっどうしてこのようなところにっ!?」
ここは、洗濯物を干す場所である。今日はとってもいい天気だから、シーツなどを干すのにぴったり。だけど……
「これ、こっちじゃなくてこっちに干した方がいいよ」
「えっ」
「いいですか、コツは風の通り道を作ること。そうするとすぐに乾くわ。物干し竿ってもう一つある?」
「えっ、あ、はいっ!」
「何枚もあるんだから天気のいい日にいっぱい洗濯して乾かしたいよね。だから今日がチャンスよ!」
「はっはいっ!!」
こんなにぎっちぎちに干したら乾くものも乾かないって。いっぱい干せばいいってものじゃない。手間はかかるけど、きっちり乾かすにはこれが一番!
だてに貧乏貴族をしてたわけじゃない。洗濯干しなんて前世からずぅ~~~~っとしてきたんだから!
「さぁさぁ持ってきて!!」
「奥様っ! 洗濯干しは私達がやりますから!!」
「さっ、反対側を持って!」
「えぇえっ!?」
みんなでやれば早く終わる。余った時間で次の仕事ができるって事だ。じゃあさっさとやっちゃった方がいいに決まってるよね。今日はいい天気なんだから!
なんて事をしつつ、第一陣の洗濯物が綺麗に物干し竿に並べられたのだ。緩やかに風に揺られている光景はいつ見ても穏やかな気持ちになる。さ、どんどん乾け~!
「も、申し訳ありません、奥様の手を煩わせてしまって……」
「な~に言ってるの。貴方達は、仕事とはいえ私達が使ったシーツを代わりに洗濯してくれたんだから、感謝を込めて手伝うのは別に悪い事じゃないでしょ? だから謝らなくていいのよ」
「ですが……」
「いいからいいから。それに私も楽しかったしね。みんなと一緒に洗濯干しが出来て嬉しかったわ」
「奥様……!」
「ありがとうございます……!」
いや~、久しぶりでだいぶ張り切っちゃった。でも楽しかったからまた手伝おうかな。
奥方は仕事をしないことが基本だから、やらなくちゃいけない事なんてレッスンぐらい。だからその余った時間は無駄にダラダラしてるより、こういうところで手伝ったりした方がいいに決まってる。
それに今までしてきた事でもあるから、今までの成果を発揮しないとね!
そうして、たびたび私はこちらにお邪魔する事が多くなった。
「奥様っ!? 掃除だなんて! お手が汚れてしまいますっ!!」
「汚れたら洗えばいいじゃない。人手はあった方がいいでしょ? それにさっさと終わらせちゃえば貴方達の休憩時間も増えるし」
「で、ですが……えぇえ!? も、もう終わってしまわれたのですか!?」
「うん。コツ、教えてあげよっか」
「お、お願いしますっ!!」
エヴァンは今色々と仕事が忙しいらしい。だから邪魔せずみんなと一緒に楽しくお仕事をしよう。私としても、実家では人数が少なく手分けして洗濯や掃除をやっていたから、作業を一人でやってたりする事がほとんどだった。農作業はみんな一緒で楽しかったけどね。
今、大人数で仕事が出来るってこんなに楽しいんだって実感してる。だからだいぶ嬉しい。