元貧乏貴族の大公夫人、大富豪の旦那様に溺愛されながら人生を横臥する!
 そして、とあるお部屋に辿り着いた。客間みたい。私達が座った高級そうなソファーの目の前にあるローテーブルに、どんどん並べられていった。


「さ、どれがいい」

「……私のこと、馬鹿にしてます?」

「何のことだ?」


 並べられたのは、可愛くて小さなプランターに植えられた苗たちだった。は? これ?


「私がこれで満足するとお思いで?」

「だろうな」


 その言葉で、ササッと違うものとチェンジされた。黒いポットトレーに入った苗たちだ。

 おい、分かってるなら最初からそれを出せよ。

 と、言うことで色々と購入し全部屋敷に送ってもらうこととなったのだった。


「はぁ、うちの庭を作り変える気だろ、この量は」

「自分の奥さんのために好みのお庭を作ってくれた大公様。まぁ! なんて素敵な旦那様なんでしょう!」

「……はぁ、分かった分かった。エプロンも必要か?」

「はーい!」

「はぁ、しょうがないな」


 だいぶ呆れられてはいたけれど、別に驚くようなものではないだろう。もう言ってあったんだから。

 それに、お金を使っていいって言ったのはそっちでしょ。上手に使えって言われてもよく分からないし、とりあえず自分の趣味の分類に入った土いじり(?)にお金をかけてみたわけだ。


「この国の大公夫人がこんなお買い物をしたことが周りに知れ渡る、って思ってるんですか?」

「いや別に。そんなものは気にしてない」

「え、そうなんですか? とりあえず日傘くらい買っておこうかなって思ってたんですけど」

「日傘?」

「メイドに言われたんです。奥様は以前外に出る事が多かったから肌が焼けてますねって。だから日傘でも買っておこうかなって」

「用意しろ」

「かしこまりました」


 あの、呆れないでくださいよ。一応貴族女性らしい買い物をしようとしてるんですから。

 とりあえず無難なものでも買っておこうかな、って思ったけど……なんじゃこりゃ。フリルとかリボンとか付いてるし。


「お貴族のご夫人方ってこんなものが好きなんですね」

「お前も夫人だぞ」

「特殊な夫人です」

「だろうな。シンプルなものはないか?」


 ピンクだったり、水色だったり、黄緑だったり。パステルカラーばっかりだ。ロリータかよってツッコミを入れたかった。


「こちらなんていかがでしょう?」

「……じゃあ、これで」

「こっちも買っとけ」

「もう一本?」

「かしこまりました~!」


 エヴァンが選んだものも入れて、だいぶ高額のお買い物が出来たのだった。

 大公家の夫人のお買い物がこんなものでいいのだろうかと自分で疑いはしたけれど、一応日傘は買ったからよしとしよう。……たぶん、大丈夫。


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