元貧乏貴族の大公夫人、大富豪の旦那様に溺愛されながら人生を横臥する!
「わぁ、スコーンだぁ!」
「食べたことあるのか」
「教えてもらった事があるんです。ウチのばぁやが教えてくれました!」
実家にいるばぁやは色々と私に教えてくれた。まぁ、前世で知ってることもあったけれどね。それと一緒にマナーも叩きこまれたけど。
でも、その時に疑問に思った事があった。目の前にあるのは、スコーンに、クリームに、あと紅茶。そう、ジャムがないのだ。いや、スコーンにジャムは必須でしょ。でも、ないのだ。パンを食べる時にも、クッキーにも、あとよく出てくるオデール大公領で採れたヨーグルトにも。
何故ないんだと思ってはいたけれど、聞いてもみんな知らない。じゃあ、作るしかないよね。だって、スコーンがクリームだけじゃつまらないもんっ!!
「……何考えてるんだ」
「何です、疑ってるんですか」
「いや別に? ただウチのご夫人はいろいろと意外な事ばっかりするタイプだからな」
「……」
それ、私が全然お貴族様っぽくない貧乏娘だって言ってるんですか。まぁ最初の頃はお前本当にご令嬢か? って疑ってたしな。
「おっと、機嫌悪くしたか? んじゃこれで許してくれ」
「んむっ」
口にスコーンをつっこまれた。何、子供だとでも思ってるのかこの人は。歳の差があるから仕方ないけどさ。私は18でそっちは30。12歳も差があるんだから。でも一応夫婦だし。子供扱いされるとムカつくし。
まぁ、とりあえず……ジャムが食べたい。
「……最近、忙しいんですか?」
「ん? いや別に」
「そうですか」
「なんだよ、聞いておいて」
「別に、お忙しい商会長様がこんなところで油売っててもいいのかな〜って思っただけです」
「おいおい、俺をもっと働かせるつもりか?」
最近、何となく疲れているように見える。まぁ、この調子だから強く聞けないんだけど。でも、もし私のせいだったら申し訳ないじゃん。ここで自由にさせてもらってるし、実家の支援もしてもらってるから。
疲れた時の、甘いもの。
幸い、エヴァンは甘いものは苦手じゃないし、作ってみて食べてもらうのも手かもしれない。