元貧乏貴族の大公夫人、大富豪の旦那様に溺愛されながら人生を謳歌する!
◇19
「本当にご夫人はお綺麗でいらっしゃいますからどれもお似合いになりますね」
「困った、一つに選べん」
「旦那様、決めてください」
しょうがないとブティックを次の日呼び、さてドレスを選ぶぞという時。エヴァンはどれがいいですか? と聞くとずっとこの状態になってしまった。
おい、どれか決めろよ。私じゃ無理だからってお願いしただろ。ど、れ、に、し、よ、う、か、な〜、で決めちゃうぞ。
今私は、ブティックの店長が自ら来てくれているためご夫人モード。でもこれは長く続かないから早く何とかしてくれ。
「ピンク、いや、黄緑も捨てがたい」
「……」
「ご夫人の素敵な髪に合わせるのでしたら、こちらなんていかがでしょう?」
「いや、足りない」
おい、さっさと決めろ。
「……旦那様とお揃いにするのですよね? なら、こっちはいかがですか? 旦那様、お似合いじゃないですか」
「採用」
「……」
結局私かい。
そんなツッコミは、ご夫人モードの私の口からは出せなかった。